台風19号 高海水温で発達、衰えず 多量の水蒸気蓄え

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 今回の台風19号は強い勢力を保って上陸し、東日本の広範囲で記録的な大雨をもたらした。日本の南海上や周辺の海面水温が高かったため、「急速に発達し、あまり衰えなかった」ことが要因として挙げられる。

 19号は6日午前、南鳥島近海で発生。台風は海面水温が26~27度より高いと発達する。坪木和久・名古屋大宇宙地球環境研究所教授(気象学)によると、発生周辺海域では29度もあり、中心気圧が24時間で915ヘクトパスカルまで77ヘクトパスカルも急降下し、「急速強化」と呼ばれる極端な発達となった。急速強化が起きた過去の台風には、関東や東海に豪雨をもたらした狩野川台風(1958年)や、5000人を超える死者・行方不明者を出した伊勢湾台風(59年)がある。

 北上すれば通常は海面水温が低くなり、台風の勢力は徐々に衰える。ところが、今回は日本周辺の南海上の海面水温が平年より1~2度高く、19号は勢力を維持。坪木教授は「(小笠原諸島・硫黄島に近い)北緯25度付近まで(米国が最強クラスに分類する)『スーパー台風』の勢力を維持していた」と話す。乾いた空気の流入など、発達の阻害要因もほとんどなかったという。

 一方、大型の台風だった19号は熱帯低気圧の段階から雲が活発に活動する範囲が広く、大量の水蒸気を蓄えていた。さらに、坪木教授は「19号の東側に、南から水蒸気が流れ込む『大気の川』(水蒸気帯)ができ、熱帯から多量の水蒸気を持ち込んだと考えられる」と指摘する。坪木教授らが上陸前の大気中の水蒸気の流れを再現したところ、東経143~145度あたりに熱帯から日本に向けて南北に延びる「大気の川」があり、北上した19号と一体化した。

 このため「大気の川」と19号本体の水蒸気が一緒になり、広範囲で長時間の豪雨になったという。「大気の川」は2015年の関東・東北豪雨でも発生、鬼怒川が氾濫する大雨となった。

 地形の影響も大きかったとみられる。

 気象庁によると、例年より太平洋高気圧が強く張り出しており、台風19号はその縁に沿うように北上し、偏西風の影響で東に進路を変え、東日本を直撃した。地形的に、東や南東から暖かく湿った空気が流れ込みやすかった長野県東部では大雨となったという。千曲川の堤防の決壊につながった一因とみられる。

 また東日本の広範囲で暖かく湿った空気が山地にぶつかって雨雲が発達し、特に山沿いで大雨につながった。【大場あい、岩間理紀】

新幹線120両が浸水

 台風19号の影響で、13日の交通網は乱れ、インフラにも大きな影響が出た。

 北陸新幹線は、千曲川の堤防決壊で長野新幹線車両センター(長野市)が浸水し、全車両の3分の1にあたる10編成(120車両)が水につかった。東京―長野間は13日夜から運転を一部再開したが、長野―富山間は再開のめどが立っていない。水が引いて再開できても、被害車両が多いため本数を減らして運行する見込みという。

 浸水被害に遭ったのは、JR東日本が所有するE7系8編成と、JR西日本所有のW7系2編成。千曲川の西約1・5キロにあり、運行を終えた車両を収納して検査・点検作業を行う車両センターの屋内外に止められていた。JR西日本によると、車両の下にはブレーキやモーターを制御するコンピューターや変圧器など走行に欠かせない機器があり、水没すると交換が必要だ。また、客席に浸水していた場合はカーペットや座席も替えなければならず、補修には1週間以上かかる可能性もあるという。

 JR東日本の在来線にも広い範囲で被害が出た。中央線高尾(東京都八王子市)―大月(山梨県大月市)間で土砂流入があり、再開のめどが立っていない。横須賀線の武蔵小杉駅(川崎市中原区)では構内が冠水。設備が故障して電車が止まらず通過していたが、14日始発から復旧する見込み。JR水郡線は、茨城県の久慈川に架かる橋が流失するなどし、全線で運転を見合わせている。

 私鉄では小田急電鉄の秦野(神奈川県秦野市)―新松田(同県松田町)間が終日運休、14日も運休する。線路脇の四十八瀬川の護岸が崩れ、架線を支える電力柱が傾いたという。

 高速道路も各所で高波によるガードレールの損傷や水没による料金所の機械故障、土砂流入などが発生し、複数区間が通行止めとなった。神奈川県の海岸線を走る西湘バイパスは、高波による損傷が複数見つかり復旧のめどが立っていない。

 空の便は成田空港(千葉県成田市)と羽田空港(東京都大田区)発着の国内外線計723便が欠航した。

 広い範囲で停電も発生した。東京電力によると、強風で樹木が電線に接触するなどし、13日午前0時ごろ千葉県や神奈川県などで最大約43万5600軒が停電。14日午前0時15分時点で、約5万9100軒で停電が続いている。中部電力管内では同0時時点で長野県などの約3万5090軒、東北電力管内では同0時10分時点で福島県などの約6600軒が停電している。

 また、13日午後5時時点で東日本の1都13県の12万軒以上で断水が確認された。【吉田卓矢、大沢瑞季】

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