「声をかける暇もなかった」遺体発見 なぜ…悔やむ生存者 福島・本宮
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
住宅街が広範囲に浸水した福島県本宮(もとみや)市本宮に14日、取材に入った。水が引いたばかりの町は粘り気の強い茶色い泥に覆われ、歩くと足を取られる。木々や標識が折れ曲がり、マンホールから水が噴き出していた。1階部分が浸水した住宅の中からは相次いで遺体が見つかった。阿武隈川が氾濫、支流の安達太良川の堤防が一部決壊したため、両川に接する低地帯で被害が広がったとみられる。
安達太良川から南に約150メートル離れた南町裡(みなみまちうら)地区では、14日午前7時ごろ、2階建て民家の前で相模原市の男性(52)が「避難所にも母の名前がない」と心配そうに、実家へ入れるところを探していた。福島県の被害の大きさをテレビで知り、1人暮らしの母親が心配で、車で駆けつけた。
午前8時過ぎ、鍵を持つデイサービスの職員が来て、1階から男性の母親(70代)が死亡しているのが見つかった。近所の人によると、女性は足腰が弱っていたという。近くの高橋順子さん(69)は12日夜に避難したが、避難所で女性がいないことに気づき、市の職員らに救出を求めた。「水が来たのはあっという間で、避難する時に周りに声をかける暇もなかった」と悔しがった。
安達太良川から北に約150メートルの舘ノ越(たてのこし)地区では14日午後1時ごろ、平屋建て住宅の前に警察官がいた。この日、住宅内で40代男性が発見されたという。この住宅の前にいた歯科医院を営む男性(47)によると、発見されたのは同じ医院で働く歯科医で、12日も出勤していたという。同日午後10時25分ごろ、避難指示が発令されたため、13日午前3時ごろ、「避難しろ」とこの歯科医に電話をすると「くるぶしまで水が来た」「物が流される」などと返事があったが、その後は連絡がとれなくなった。「避難の指示が出たら、空振りでもいいから絶対に逃げた方がいい。高齢か若いかなんて、関係ない」。男性は唇を震わせた。
隣家の男性理容師(48)は2階建て店舗兼自宅の2階にいた。1階が浸水し、家具が浮いて天井に当たったり、ガラス窓が割れる音が聞こえたりしたという。「『雨が静かだな』と思って外を見ていたら、怖いくらいひたひたと水が町にたまり、13日の明け方には2階まで水が来そうで怖かった。ボートでやっと助かった」と振り返った。【寺町六花】
関連記事
-
<家も畑も「本当に無くなっちゃった…」>住民ぼうぜん 堤防決壊の千曲川
-
<路上生活者の避難拒否>自治体の意識の差が浮き彫りに 専門家「究極の差別だ」
動画あり -
<胸が熱くなった…>試合中止のカナダ代表、釜石で土砂除去などボランティア
-
-
<自民・二階氏>台風被害に「まずまずに収まった感じ」 野党批判
-
<限りない泥の海「何から手をつければ」>危険で自宅も見に行けず
-
<大規模河川の堤防も対応能力超え決壊>そのメカニズムとは?
-
-
【写真特集】台風19号被害 各地の様子
-
孤立した病院と老人保健施設 ようやく水が引く 福島・本宮
-
避難所が被災 孤立の住民ようやく救出 福島郡山 新たな雨に不安深く
-
-
桜の戦士 台風被災地を思い「きょうはただの試合ではなかった」