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台風19号 母犠牲、悔やみきれず 独居、疎遠、悩む中 福島

「手先が器用なおふくろで、私も手伝わされた」。パッチワークで作ったこたつのかけ布団を広げる鈴木教夫さん=福島県本宮市本宮で15日

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 台風19号で阿武隈川が氾濫するなどして多くの住宅が浸水した福島県本宮市では15日朝、78歳の女性の遺体が見つかった家屋で、泥だらけの畳や家電製品を外に運び出していた男性がいた。相模原市の介護士、鈴木教夫(のりお)さん(52)で、女性は1人で暮らしていた母幸子さん。近年は疎遠になっていたという母の思い出の品を手に取りながら、「悔やんでも悔やみきれない」と肩を落とした。【寺町六花】

     棚が倒れ、畳がめくれ上がった室内に、衣装ケースがあった。開けてみると、母が家族のために編んだ色とりどりのセーターがしまってあった。「沈まなかったから、きれいな状態なのかな」。相模原市の自宅にも母が編んでくれた茶色のセーターがある。鈴木さんは「セーターが買う物だとは家を出るまで知らなかった」とほほ笑んだ。

     台風が伊豆半島に上陸した翌13日朝、テレビのニュースで福島県でも被害が広がっていることを知った。足腰が弱っていた母が心配になり、14日未明、レンタカーでたどり着いた。しかし、玄関は施錠され、ドアをたたいても応答がなく、避難所を回っても名前はなかった。

    宮城県丸森町中心部への道が断たれ孤立した集落では、上空から見えるように枝などを使って「水 食料」の文字が描かれていた=同町で15日、本社ヘリから

     夜が明け、合鍵を持つデイサービスの職員と家の中に入ると、母は1階のベッドの下で冷たくなっていた。「ああ、ここにいたのか」。台所の流しには、12日にヘルパーと食事をした跡があり、炊飯器には白飯が入ったままだった。

     母は転勤が多い警察官の夫を支え、鈴木さんら子ども3人を育て上げた。得意料理はサンマのつみれ汁。家計をやりくりするためだったのか、カレーは少し水っぽかった。手先が器用で、着る服は何でも作ってくれた。パッチワークで作ったこたつのかけ布団は家族をあたためた。旅行好きの明るい性格で、近所の人からは「さっちゃん」と親しまれた。

     2016年2月に父が亡くなってから、母はつえをついて歩くこともあった。「僕もおふくろも、お互い強情っぱりだった」。ここ数年は疎遠になり、ほとんど連絡を取らず、墓参りのために帰省しても顔を出さなかった。今年6月に戻ったときも、家の外から明かりがついているのを確認しただけ。「おふくろ、生きてるな」。それが「母の気配」を感じた最後だった。

     このままの関係でいいのか悩み始めていたさなかの台風だった。遺体を見つけた14日、デイサービスの職員から、5月にあった母の誕生会での写真をもらい、驚いた。写真の中の母は、職員が描いた似顔絵とともに穏やかにほほ笑んでいた。

     「こんな笑顔をしてたんだ。皆に大事にしてもらってたんだな」

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