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宮城・丸森町で新たに5人行方不明 何が起きたのか

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被災当日を振り返る海川正則さん=宮城県丸森町で2019年10月16日午後4時48分、猪飼健史撮影

 台風19号で阿武隈川の支流の堤防が決壊した宮城県丸森町は16日、新たに5人が行方不明だと発表し、同日夕には死者も7人に達した。町内は今もほとんどの世帯で断水状態が続いている。急な浸水と土砂崩れにより、孤立する人たちを多く出した台風。被害は甚大で、生活再建の道筋はまだ見えない。

 16日、丸森町西部の坂下地区。行方不明になっている大槻利子さんを捜しに来た長男恵太さん(36)は、土砂に埋もれた木々の間から見つけた1枚の写真を手に取った。クラブ活動で集まった仲間と一緒にすまし顔の母。「多趣味なお袋らしい」と言葉を詰まらせた。

 11世帯39人が暮らした集落は土砂が積もり、電柱が倒れている。台風前の面影は見いだせない。住民の大槻武光さん(50)は「あの日は、地響きとともに始まった」と振り返る。

 12日午後9時過ぎ、ガシャンという音を聞いた。外を見ると、茶色い濁流が押し寄せており、家族を自宅2階に避難させた。1階は浸水したが、2階は無事だった。

 翌朝、地区を見回ると、利子さんと、90代になる利子さんの母竹子さんが住む家が流され、土台だけが残されていた。利子さんの妹の小野正子さんと夫の新一さん=いずれも60代=の夫婦も町内の自宅から避難してきていた。近くからは1人の遺体が見つかった。武光さんは「小さな集落で助け合って生きてきた。こんなことが起きるとは」と絶句した。

 武光さんから連絡を受けた恵太さんは毎日現場に訪れ、家族を捜している。父を早くに亡くし、厳しくも優しく育ててくれた母。どんな話も聞いてくれた祖母。よく遊びに来てくれた叔母夫婦。「早くみんなが見つかってほしい」と語る。

    ■

 町中心部に近い竹谷地区では、支流の新川の堤防が決壊。自宅にいた会社員の伏見慶一さん(57)と無職の鶴巻健一さん(54)が亡くなった。地区に住む125世帯はお互いに顔見知りだった。自主防災会会長の海川正則さん(72)は「多くの人が被害に遭い、家も住める状態じゃない。これからどうすればいいのか」と肩を落とした。

捜索活動を見守る大槻恵太さん(手前)。母親が土砂に流されて安否不明のままだ=宮城県丸森町で2019年10月16日午後2時21分、平川義之撮影

 自宅隣の作業場にいた12日午後8時半ごろ、茶色い水が押し寄せた。数分のうちに首までつかり、近くにいた妻信子さん(69)と自宅まで泳いだ。自宅は1階が天井近くまで浸水し、階段を探して潜って泳ぐことを繰り返し、ようやく2階にたどり着いた。

 2階には一緒に住む長女道子さん(43)が避難していたが、ともに泳いできた信子さんの姿は見えなかった。床に穴を開けて1階をのぞくと、カーテンにしがみつく信子さんを見つけた。シーツを体に巻き付けさせて持ち上げようとしたができない。飛び降りて助けようとしたが、信子さんから「一緒に死んだらいけない」と懇願されて助けを待った。13日未明、救急隊に無事救出された。信子さんは「死ぬ思いをした」と振り返る。

 福島県境にある丸森町は、阿武隈川と多くの支流が流れる山に囲まれた盆地で農林業が盛んだ。人口は約1万3500人、高齢化が進み、65歳以上が約4割を占める。

 海川さんは地元で生まれ育ち、農業を営む。町内では1986年8月の台風10号で川が氾濫し、1人が亡くなったが、竹谷地区で大きな被害は出なかった。海川さんは「隣近所で声をかけ合ったが、避難所に行くのが間に合わなかった人もいる。これほどの被害になるとは想像できなかった」と語る。

    ■

 阿武隈川の別の支流、五福谷川周辺でも大きな被害が出た。地元の民生委員、佐久間新平さん(70)宅近くでは住宅4棟が流され、多くの家が浸水被害に遭った。佐久間さんは2011年3月の東日本大震災を教訓に、地元の人たちが集まる新年会で一時避難の場所を伝えて、緊急連絡網を作ってきた。

 台風19号が来る直前も住民に声をかけ、避難所に決めた集会所に人を集めた。だが、避難所にも数分で水が押し寄せ、高台への避難を余儀なくされた。

 今は妻とともに避難所に身を寄せる。「備えはしていたが、想定外のスピードで水が押し寄せた。もう自宅に戻って暮らせないかもしれない」と話した。「東日本大震災の時は避難所にも行かずに済んだ。今回の台風の方が不安が大きい」【井川諒太郎、滝沢一誠、藤田花】

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