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世界経済と貿易摩擦 大国の身勝手が招く停滞

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 世界経済の停滞が鮮明になった。今年の世界全体の成長率はリーマン危機以来の低水準にとどまると国際通貨基金(IMF)が発表した。身勝手な貿易政策が招いたものだ。

 最大の懸案である米中の貿易戦争を巡っては、両国がひとまず歩み寄る姿勢を示した。中国は米農産物の購入拡大、米国は今週予定していた追加関税の見送りを決めた。

 だが、中国の産業補助金など難題は先送りされた。米中がかけ合った高関税もそのままだ。再び制裁合戦に突入する危険をはらむ。

 新たな火種は、米国と欧州連合(EU)の摩擦である。世界の航空機市場でシェアを競う米ボーイングと欧州エアバスに関わる紛争だ。

 米国は、EUのエアバス向け補助金に対抗し、EUの農産物などに最大8000億円の報復関税を週内に発動する。EUも米国のボーイング向け補助金に対し2兆円規模の報復を検討中だ。大規模な関税の応酬は世界経済のさらなる重荷となる。

 米中欧は「経済大国」として、世界経済の安定に責任を負う。自らの利益に固執し、国際秩序を損なってはいけない。

 特に問題なのはトランプ米政権だ。対中制裁は世界貿易機関(WTO)のルール違反の疑いが濃い。報復を呼び、世界に混乱を広げる。協議を通じて解決すべきだ。

 中国も国際ルールにそぐわない過度な補助金を見直す必要がある。補助金頼みの非効率な経済を変えることは安定成長に資するはずだ。

 米国のEUへの報復はWTOが認めた措置だ。ただ目的は、保護主義ではなく、公正な競争をゆがめる補助金の是正を相手に促すことだ。

 にもかかわらずトランプ大統領は報復が認められた際「米国の大勝利」と強調した。自らの保護主義に利用したいのだろう。EUが報復で対立を激しくしているのも問題だ。

 そもそも米欧の補助金についてはWTOは既に不当と判断している。しかも米欧は中国の補助金を批判してきた。ならば自らも速やかに是正し、報復をやめるのが筋だ。

 主要20カ国・地域(G20)の財務相らがきょうからワシントンで世界経済の課題を話し合う。米中欧は対立の緩和を図り、議長国を務める日本も自制を促すべきだ。

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