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つながり紡いで

図書館とつくる親子の居場所 外国人の子育てを支援=山野上隆史 /大阪

皆で七夕飾りを作った参加者。写真中央左で子どもを抱っこしているのが津田さん=豊中市の庄内図書館で 

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 「子どもがいるから、時間通りには行けない。でも、みんなゆっくり待っていてくれる。実家みたい」

 火曜日の午前中、図書館の一室に多様なルーツの親子が集まる。「おやこでにほんご」は日本で子育てする外国人ママの居場所づくりの活動だ。当初は豊中駅前で始まったが、図書館の活性化や多文化共生の推進をねらい、豊中市南部の庄内図書館と協働で2002年に開始した。その取り組みをモデルに、翌年に市中央の岡町図書館、12年には北東部の千里図書館でも始まった。

 とよなか国際交流協会では、言葉を学ぶ日本語交流活動と並行して、多文化保育の活動を行うなど子育て中の外国人ママが参加しやすい環境を作ってきた。しかし、ベビーカーで外に出るのは大変で、頑張って行っても子どもが泣いたり走り回ったりすることを気にして家にこもりがちになるケースがあった。

 そこで始めたのが、外国人も日本人のボランティアも親子で参加する「おやこでにほんご」だ。同じ立場だからこそ気兼ねなく、安心して参加できる。

 津田亜矢さんは08年に国際結婚で中国から来日した。来日後に2人の子どもを出産し、子育て中。「同居する義母の世話もある。家でインターネットをするか、自分と同じように国際結婚で来日した妹の家しか行くところがなかった」と振り返る。

 ある日、近所のスーパーで「おやこでにほんご」に参加しているボランティアから案内のチラシをもらった。「最初は怪しいかもと思ったけど、図書館だから安心かな、ちょっと見てみようと思った」

 ともに子育ての話をしたり、子どものお弁当を作ってみたり。「学校のお道具箱って?」となれば一緒に買いに行ったり。野菜の収穫やピクニックなども親子で経験した。「リフレッシュ、リラックス、安心できる居場所。それに何でも聞ける。日本人のママ友も、中国人のママ友もできてうれしかった。子どもも友だちが増えた」と語る。

 一方、日本人ボランティアにとっても「おやこでにほんご」は、多様な子育て観との出会いの場になっている。出産や夫の転勤などの理由で退職し、社会と切り離された感覚を持った女性の社会参加、自己実現の場でもある。

 さらに、この活動は図書館による多文化共生の取り組みにつながった。外国人利用者の存在がリアルになり、多言語での蔵書購入や絵本の読み聞かせ、受付での指さしカードの導入など対応が進んだ。

 図書館という近くにある身近な公共施設だからこそ、外国人ママも参加しやすく、孤立を防げる。参加者が子育て中という同じ状況だからこそ、対等な立場で安心して過ごせる。多文化共生のまちづくりは専門家や専門機関だけのものではない。さまざまな機関、人ができることを持ち寄ってこそ、広がっていく。つながって取り組むことが大切だ。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は11月22日掲載予定。


 ■人物略歴

山野上隆史(やまのうえ・たかし)さん

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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