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「もうギブアップ」中心部つなぐ橋崩落 不通のJR鉄橋で往来も… 福島・矢祭

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台風の影響で崩落した高地原橋。奥に見えるのがJRの鉄橋=福島県矢祭町で2019年10月19日午前9時34分、古川幸奈撮影

 台風19号で大きな被害を受けた福島県最南部の矢祭町では、高地原地区と町中心部をつなぐ唯一の橋が崩落し、12日夜から同地区の一部の集落が孤立状態となっている。「いつまでこの状態が続くのか」。車も使えず、不通になっているJR水郡線の鉄橋を歩いて渡る状態が続く住民たちは不安な日々を過ごしている。【古川幸奈】

 

 20日午後、記者が矢祭町に入ると、JRの鉄橋を歩いて地元のボランティア数人が20リットルの水が入ったポリタンクを運んでいた。大雨で久慈川が増水し、12日午後10時すぎに川に架かる全長80メートルの橋と水道管が流失した。高地原地区では電気やガスは使えるものの、断水が続く。

 集落と国道118号を結ぶ橋は町中心部へ出られる唯一の道路だったため、乳児から90代までの11世帯約30人が孤立している。町はJR東日本と交渉し、台風の影響で不通となった水郡線の鉄橋を使用する許可を得た。

 だが、鉄橋は車が通れない。住民の約3分の1を占める70歳以上の高齢者にとって、荷物を持っての移動は重労働だ。「道具も材料も運び出せないから仕事にならないよ。何もできない、もうギブアップ」。左官業を営む集落の住民、石井通(とおる)さん(62)は鉄橋に腰掛けながらため息をついた。目の前の川べりには、草が絡みついた赤い橋の残骸が見えた。

 車が使えないため、石井さんは仕事の依頼を断って自宅でテレビを見ながら酒を飲む毎日だという。「このままじゃ食いっぱぐれる。今までは災害といっても人ごとだった。いざ当事者になるとひどいもんだよ」。近くのスーパーまでは歩いて1時間以上かかる。買い物の際は、親戚や知人に頼み、鉄橋のたもとから車で送迎してもらっているという。

 住民によると、橋が崩落した午後10時前後には川の水があふれ、木が根こそぎ流されていたという。対岸の川沿いにある店舗なども約1メートル浸水した。孤立集落の松本キミさん(73)は生活用水は井戸水でまかなっているが、風呂は追いだき機能がなく使えない。水を加熱する装置を買い、7、8時間かけて温めることにした。町は約5キロ離れた大浴場を無料開放しているが、鉄橋を渡る必要があるため、「そこまで行く勇気はない」と言う。

 夫の勇一さん(76)は足腰が弱く、つえをついて歩く。17日にはキミさんと一緒に鉄橋を渡り、以前勤務していた会社の事業所に行き、5日ぶりに入浴した。「ずっとタオルで体を拭くだけだった。やっぱり風呂はいいな」と勇一さん。

 孫夫婦は生後5カ月のひ孫を連れて隣町に避難した。キミさんは「橋が壊れるなんて夢にも思わなかった。元の生活に戻りたい。いつまでこの状態が続くのか」と嘆く。

 町によると、橋の再建までには3年、仮復旧にも半年はかかる。JRは11月1日から集落近くの矢祭山駅を含む区間で列車の運行を再開する予定で、鉄橋が使えるのは今月29日まで。町は集落の住民に一時的な避難を呼びかけたが、高齢者が多く、空き巣の懸念もあることなどから、否定的な住民が多かったという。

 この日、孤立した集落では町と住民による2回目の協議が開かれ、佐川正一郎町長が1週間後に乗用車の通れる簡単な渡り橋を設置することなどを説明した。住民からは、接近している台風20、21号への備えや橋の強度、断水の解消時期を心配する声が相次いだ。

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