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第69期王将戦リーグ特選譜

糸谷が「暗闇」を脱出 三浦とともに1勝2敗で後半戦へ

王将戦リーグでの対局を振り返る糸谷哲郎八段(右)と三浦弘行九段=東京・市ケ谷の将棋会館で2019年10月21日午後5時34分、丸山進撮影

 「今は目が見えていないので、暗闇をなんとかしなくては」

 本局から3日前の藤井聡太七段戦で致命的な見落としから敗戦を喫した糸谷哲郎八段のこの深刻なコメントに驚いた方も多かっただろう。

 糸谷は正直というか、思っていることを割とストレートに語るタイプなので、恐らく公式戦5連敗を喫した直後のこの言葉も本音なのだろう。だが、なかなか深刻さをこのように吐露する棋士はいない。しばらく対局がないわけではなく、王将戦リーグのように短期間の中で次々と対局が控える棋戦もある。その中で戦いながら本調子を取り戻すのは容易ではない。

 もっとも勝率10割でない限り、このような悩みは棋士につきものだ。どこで何を変えるか。それは対局を重ねる中で解決するしかない。【山村英樹】=▲が先手、△は後手

<第69期大阪王将杯王将戦挑戦者決定リーグ3回戦>

2019年10月21日

持ち時間各4時間

場所:東京・将棋会館

▲糸谷哲郎八段(0勝2敗)

△三浦弘行九段(1勝1敗)

▲2六歩  △8四歩  ▲2五歩  △8五歩

▲7六歩  △3二金  ▲7七角  △3四歩

▲6八銀  △7七角成 ▲同 銀  △2二銀

▲4八銀  △6二銀  ▲7八金  △3三銀

▲4六歩  △6四歩  ▲4七銀  △6三銀

▲6八玉  △4二玉  ▲3六歩  △7四歩

▲3七桂  △7三桂  ▲4八金  △8一飛

▲2九飛  △6二金  ▲9六歩  △1四歩

▲1六歩  △9四歩  ▲6六歩  △5四銀

▲5六銀  △5二玉  ▲7九玉  △4二玉

▲8八玉  △6五歩  ▲同 歩  △同 桂

▲6六銀  △6四歩  ▲4五歩  △9五歩6

▲同 歩  △3五歩  ▲同 歩1 △8六歩

▲同 歩  △同 飛  ▲8七歩  △8一飛

▲4六角  △3六歩  ▲6四角  △3七歩成

▲同 角  △7五歩(第1図)

 三浦は前局で苦手としていた広瀬章人竜王に勝ち、1勝1敗のタイ。一番優勝に近いのは将棋日本シリーズJTプロ公式戦で、26日に大阪市で渡辺明王将と準決勝を戦う。勝てば決勝は広瀬が相手。王将戦リーグにも入り、充実した対局が続く秋になった。

 ご覧の通り、ほとんどの着手がノータイムでこんなに手数が続いた。近年の角換わり戦は、前述の糸谷―藤井戦もそうだったように、ある程度までは一気に進む。その後数手、十数手が勝敗の分かれ目で、1回形勢が離れると差が広がっていく傾向がある。

 こういう将棋は現代の主流だが、面白いと感じる人もいれば、あまり面白みを感じない人もいるだろう。アマチュアの指す将棋に角換わりが少ないと聞く。研究の重要さが際立つ戦法で、そのしのぎあいに面白みを感じる棋士は多い。本局の2人もよく研究し、それを実戦で試すタイプだ。

 ▲8八玉の入城を見て△6五歩と仕掛け、さらに端と3筋の歩の突き捨てを入れて飛先交換。桂を取って△7五歩とかさにかかる。最近の三浦らしい積極性だ。ただ、糸谷も無策で受けるわけではない。まだ始まって1時間もたたないうちに険しい場面にさしかかった。

 第1図以下の指し手

▲6九飛32 △9五香  ▲同 香17 △6八歩

▲同 飛4 △5九角  ▲6九飛13 △9五角成11

▲8六香1(第2図)

 すぐ6五の地点で精算せずに、▲6九飛は冷静な受け。この手にほぼ初めて糸谷は考慮し、しかも32分の長考になった。早見えのタイプ、しかも研究範囲だろうから後手からの攻めにどう対応するか選択肢もあっただろうが、この飛の移動で受けた。

 ところが、三浦は香を走って1歩を補充し、△6八歩~△5九角で手を続けた。「部分的にはうまくいっているようだが」と局後に何度か語ったが、…

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山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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