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食卓から消えた白身魚「銀ムツ」 実は北京ダックより高価

天福苑のメロ料理。値段は張るが、人気メニューだという=中国江蘇省無錫で2019年8月21日、赤間清広撮影

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 「銀ムツ」という魚を覚えているだろうか。かつては安くておいしい白身魚としてスーパーなどで人気だったが、今では日本の食卓からすっかり姿を消してしまった。そのわけを探ると、魚の「買い負け」という厳しい現実が浮かび上がった。

 「こんなに脂が乗ったおいしい魚があるのか……」。1985年当時、大西洋に浮かぶスペイン領カナリア諸島の最大都市ラスパルマスで、大洋漁業(現マルハニチロ)の現地駐在所に勤務していた福田隆さん(67)は、その魚を初めて食べた時の驚きを忘れられない。魚の名は「メロ」。正式和名は「マジェランアイナメ」といい、南極付近の深海に生息する。

 その後、日本で輸入魚の買い付け担当となった福田さんは、93年に大手スーパーの店頭でチリ産のメロの試食販売を試みたところ、1日1500パックと爆発的に売れた。「メロじゃなじみがないので、何かいい名前がないかな」。銀ダラやムツが連想される「銀ムツ」に商品名を決め、価格は3切れで500円弱。スーパーの店員は「何十年もやっているが、こんなに売れた魚は初めてだ」と目を丸くしたという。90年代後半にかけて銀ムツは日本の食卓に急速に広まっていった。

 だが、2000年代に入るとメロの価格は急上昇を始める。乱獲を防ぐため漁獲規制が厳しくなる一方で、世界的に需要が増加。特に中国の輸入増加が激しく、日本は「買い負け」するようになった。そのうえ、03年に水産庁が出した指針で、紛らわしいとして「銀ムツ」の名称が使えなくなったことも消費者離れに拍車をかけた。

 「80年代に1キロ300円ほどだったメロの仕入れ価格は、今では4000円近く。お手上げだ」。マルハニチロで魚の買い付けを担当する中島潤さん(41)はさじを投げる。日本向けの買い付けは、カマの部分のごくわずか。マルハニチロが調達するメロのほとんどが海外向けに売られる。

ワシントンではソテー1皿が50ドル

 今年8月、中国・江蘇省無錫で人気の料理店「天福苑」では、メロが1皿258元(約4000円)で提供されていた。1羽168元の北京ダックに比べても格段に高いが、店員が「来店客は皆注文する」というほどの人気ぶりだ。北京市内のスーパーにも冷凍物が並ぶ。急速に魚食が普及する中国は今や世界最大規模のメロ消費国となっている。米国でもメロの人気は高く、ワシントンのレストランでソテーが1皿50ドル(約5400)円程度で提供されている。

 「魚は安くて当たり前」の日本では、魚価の上昇や食文化の変化で魚離れが進む。「担当してから買い負けばかり」。マルハニチロで、日本でも人気のカラスガレイを担当する以南洋平さん(42)が嘆くように、他の魚種でも買い負けが顕著になっている。日本食ブームなどで「水産物は世界で取り合い」(マルハニチロ幹部)の状況の中で日本だけが取り残され、いずれ魚は庶民にとって「“高値”の花」になるかもしれない。

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