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経営陣の顔ぶれを代えただけで、機能不全に陥った巨大な官民ファンドを立て直せるか。懸念が拭えない。
経済産業省が所管する投資規模2兆円のファンド、産業革新投資機構(JIC)が元みずほ証券社長の横尾敬介氏をトップとする新経営体制を内定した。
JICは昨年9月、安倍政権下で乱立した官民ファンドを整理し、新産業育成を強化するため発足した。
しかし、報酬などを巡って経産省と対立した当時の田中正明社長ら民間出身役員が昨年12月に総退陣し、休眠状態に追い込まれていた。
経産省は横尾社長の報酬を従来最高額の公的機関理事長並みの3000万円程度に抑えたと強調する。
田中前社長に民間ファンドに準じた報酬を一旦約束しながら、高額との批判を浴びて撤回を強いられた反省を踏まえたものだ。
だが、総退陣の背景には、報酬に加え、ファンド運営をめぐる対立があった。元メガバンク副社長やベンチャー投資家出身の前経営陣は、海外ファンド並みの成果を重視した投資で新産業育成を図ろうとした。
これに対して、経産省は国の産業政策に従うことを求め、JICの投資方針や運営にも介入しようとした。改革の担い手を自負していた田中氏らは激怒し、サジを投げた。
公的資金が入った官民ファンドはもともと大きな矛盾を抱える。
官の立場では、民間が手を出さないリスクの高い投資も国策として行う必要がある。経営不振企業の救済は雇用悪化を防ぐ目的が大きい。
一方、民間の立場からは、投資成果が最優先だ。相応の報酬を支払わないと、優秀な運用担当者が集まらないのも確かだ。
この二律背反は残ったままだ。加えて、経産省は田中氏のような民間流の投資手法を厳しく批判しており、JIC新体制の運営は官主導色が濃くなる可能性がある。
JICでは、傘下ファンドが投資した液晶大手、ジャパンディスプレイの再建策が迷走し、追加支援が「ゾンビ企業救済」と批判されている。
再始動するJICはどんなファンドを目指そうとしているのか。存続させる意義を明確にしないまま多額の公的資金を使うことになれば、国民の納得は得られまい。