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台風19号2週間 犠牲者、多くが高齢者 /福島

台風19号で亡くなった永石典明さん手作りの木彫り細工の置物=福島県いわき市常磐上湯長谷町で

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 台風19号の上陸から26日で2週間となる。県内では29人が死亡、1人の行方が分かっていない。犠牲者の多くが高齢者で、逃げ遅れたとみられる。25日は県内で再び大雨が降り、台風で大きな被害が出たいわき市は全域に避難指示が発令、宮川が氾濫するなど、住民は不安な夜を過ごした。

 ◆いわき

親族の救助向かい 亡くなった永石さん(62)

 いわき市常磐上湯長谷町の会社員、永石典明さん(62)は、川の氾濫で家が冠水した親族を助けに行くために外出し、途中で濁流にのまれたとみられる。妻ひとみさん(60)は「やさしくて親切な人だから夜中でも出かけたが、もっと早い段階で助けに行くか、消防に救助を頼めばよかった」と悔やんだ。

 永石さんは13日午前0時ごろ外出し、親族宅近くの自動車整備工場の敷地で倒れているところを発見された。発見した整備工場の経営者の男性(65)によると、永石さんは高台に車をとめて、工場前を通って親族宅に向かおうとして、川からあふれた水で流された可能性が高いという。

 男性は永石さんと40年来の顔見知り。若い時はお互い好きなバイクの話をしていたといい「持っていた免許証を警察に見せられて永石さんと分かり驚いた。残念だ」と話した。

 看護師として働くひとみさんを、永石さんは車で勤務先まで送り、疲れているのを察すると食事や催しに出かけるよう誘ってくれたという。大柄でがっちりした体形ながら、木彫り細工が趣味で自宅のテーブルや置物、愛犬の位牌(いはい)なども手作りしていた。ひとみさんは「本当に頼りになる人で、『呼子のイカを絶対に食べさせたい』と言ってくれていた。これからもっと一緒に旅行もしたかったのに」と語った。

 永石さんは約25年前、運転手として市内のタクシー会社に入り、この10年ほどは事務をこなしていた。タクシー会社の同僚(60)は「配車などの仕事をしていて、きちょうめんで責任感が強かった。車好きで愛車はいつもピカピカだった。職場に欠かせない人だし、これからやりたいこともあっただろうに」と惜しんだ。【乾達】

マットごと川へ 内桶さん(97)

 いわき市平幕ノ内の内桶光江さん(97)は介護に訪れていた長男とともに自宅から川に流され、16日に遺体で見つかった。近所の人らによると、当時は決壊した上流から流れ込んだ水が2メートル以上の高さに達しており、助け出そうとした長男とともにベッドのマットに乗ったまま流されたとみられる。市消防本部によると、長男は約4キロ下流で救助された。

 内桶さん宅は夏井川の堤防のそばに立つ古くからの平屋で、夫を亡くしてから1人暮らし。近所に住む長男ら子ども3人が交代で世話をしていた。以前は、家族で花屋を営んでいたという。

 隣家の女性(74)は約40年のつきあいで、東日本大震災が発生した際、余震が続くなかで内桶さんが女性宅に避難し、一晩一緒に過ごしたこともあった。「年をとっても出かけるときにはきちんと化粧をする上品な人で、私の孫らがおやつやお年玉をいただいていた。私の実家が内桶さんの家の大家なので、この家で生涯を全うするつもりでおられて『最後までよろしくお願いします』と丁寧にあいさつしてくれた」と振り返る。

 内桶さんは市内のショートステイを利用しており、女性は台風の2日ほど前に自宅に戻ってきた姿も見たという。「少し日程がずれていればこんなことにならなかった。100歳まで生きられただろうに」と惜しんだ。【乾達】

平屋建て自宅で 帰山さん(86)

 いわき市平下平窪の帰山みどりさん(86)は、夏井川堤防近くの平屋建ての自宅で死亡しているのが見つかった。近所の住民らの話では、手を振って助けを求めていたとの情報もあるが、周囲が増水していて近づけなかった。最近まで飼い犬を散歩させる姿が見られ、台風接近前に近隣の家への避難を勧められた際には「犬がいるから残る」と断っていたという。

 高校教諭だった夫の死後は1人で暮らし、市内に住む娘が世話をする姿が見られたという。買い物など手伝いをしていた近くの女性(75)は「やさしくて、頭の切れる人だった。夜中に『トイレが流れない』と電話があって、様子を見に行こうと表に出たが、道路に水がいっぱいで近づけなかった。先月、庭の草むしりをしてあげて、喜んでくれていたのに」と悔やんだ。【乾達】

水没した自室で 79歳男性

 いわき市平中塩の市営住宅団地で1人暮らしをしていた男性(79)は、水没した自室で17日に見つかった。近所づきあいはほとんどなかったといい、訪れた福祉関係者の通報で警察が室内を捜索して遺体を発見した。

 市営住宅団地は、夏井川の堤防近くに長屋形式の平屋が20棟並んでいた。隣の棟の女性(73)は、男性が台風接近前日の今月11日夕方に自室の前で車から買い物の荷物を下ろした後、向かいの駐車場に車をとめる姿を見た。女性が避難先から戻っても、車は駐車場に残ったままだった。

 男性は以前、市内の商業施設のやきとり屋に勤めていたと聞いており、顔を合わせた際に様子をたずねると「元気だよ」などと答えていたという。

 団地の住民によると、12日午後10時ごろに屋内に水が入り込み、ドアを押し開けて避難しようとした時に電気も消えたといい、「水位がどんどん上がったので、気づくのが遅れたらドアを開けるのも難しかったかもしれない」と話していた。【乾達】

 ◆本宮

娘や孫と避難せず 1階寝室で佐藤さん(79)

 阿武隈川堤防から近い本宮市本宮大町地区では、佐藤悦子さん(79)が2階建て自宅の1階寝室で倒れているところを発見された。

 同居する娘婿によると13日午後、自衛隊員が発見。寝室は浸水し、タンスなどが横倒しになっていたという。佐藤さんは、娘夫婦と孫3人の計6人家族。13日午前0時ごろ、娘が寝室で寝ていた佐藤さんに避難を呼びかけたが「大丈夫だから」と言い、一緒に避難しなかったという。建設関係の仕事をしている娘婿は、川の排水作業のため外に出ており、娘と孫3人は車で近くの小学校に避難した。

 近隣住民によると、付近の水かさは午前2時ごろ急上昇し、1時間ほどで2メートル近くに達した。1986年8月の「8・5水害」では、周囲の浸水は深くなかったといい、娘婿は「寝ていれば水は引くと思ったのでは。もっと強く言えばよかった」と悔やんだ。

 佐藤さんは近所で週6回開かれている朝のラジオ体操に毎日参加していたという。歌が好きで、仲間同士でカラオケにいくと真っ先にマイクを持ったといい、同地区に住む女性(70)は「亡くなったと聞いてうそじゃないかと思った。残念だ」と肩を落とした。【渡部直樹】

 ◆行方不明の男性、川内で捜索続く

 川内村では、行方の分からない建設会社員の男性(69)の捜索が続いている。男性は福島市在住で、トンネル工事のために村内の宿舎で寝泊まりしていた。男性が乗っていたとみられる車が見つかっている。25日は午前9時40分ごろから双葉署員ら約50人態勢で、流された可能性がある木戸川沿いやダム付近を中心に捜索した。【磯貝映奈】


 ■台風19号で県内で亡くなった方々

亡くなった方       発見された場所    当時の状況

佐藤之江さん(91)   いわき市平下平窪   平屋建ての自宅で発見。足が不自由だった

大内寿美子さん(100) いわき市平下平窪   2階建ての自宅1階で発見。足が不自由だった

関根治さん(86)    いわき市平下平窪   平屋建ての自宅で発見。足が不自由だった

帰山みどりさん(86)  いわき市平下平窪   1人暮らしの平屋建て自宅で発見

岡田コウさん(100)  いわき市平赤井    1人暮らしの平屋建て自宅で発見。つえを使っていた

永石典明さん(62)   いわき市内郷御台境町 工場敷地通路で発見。親族の救助に向かう途中だったとみられる

内桶光江さん(97)   いわき市平幕ノ内   平屋建て自宅から、マットに乗ったまま流された

男性(79)       いわき市平中塩    1人暮らしの平屋建て市営住宅自室で発見

佐々木英一さん(77)  本宮市本宮舘町    アパート1階の自室で発見

佐藤悦子さん(79)   本宮市本宮大町    2階建て自宅の1階寝室で発見

伊藤一夫さん(64)   本宮市本宮舘町    平屋建て借家で発見

鈴木幸子さん(78)   本宮市本宮南町裡   2階建て自宅の1階で発見

曽我祐一さん(48)   本宮市本宮舘ノ越   歯科医。平屋建て社宅の玄関で発見

山口正明さん(72)   本宮市本宮南町裡   勤務先の病院近くの路上で発見。災害対応に当たったとみられる

渡辺洋幸さん(70)   本宮市本宮南町裡   同上

男性(67)       郡山市大町2     車庫の屋根上で発見

男性(69)       郡山市水門町     共同住宅の玄関付近の外で発見

女性(36)       郡山市田村町     谷田川地区の黒石川で発見

男児(10)       郡山市田村町     守山地区の河川敷で発見

男児(7)        郡山市田村町     谷田川地区の黒石川で発見

伊藤行男さん(61)   郡山市富久山町    鉄道橋下で発見。氾濫した川の水に流されたとみられる

橋本昭寿さん(78)   須賀川市館取町    1人暮らしのアパート1階の自室で発見

大淵広子さん(79)   須賀川市館取町    1人暮らしのアパート1階の自室で発見

三浦照美さん(60)   二本松市百目木    自宅裏の様子を見に行き、土砂崩れに巻き込まれた

三浦みき子さん(67)  二本松市百目木    同上

尾形キミ子さん(68)  白河市八竜神     自宅脇で土砂崩れが発生、自宅1階で巻き込まれる

男性(65)       白河市表郷      車の屋根で救助を待ったが流され、付近の用水路で発見

大内涼平さん(25)   南相馬市小高区    市職員。台風対応を終え、退庁後に車が水没。近くの農地で発見

菅野秀雄さん(75)   飯舘村深谷      県道脇で車が見つかり、用水路で遺体を発見

 ■行方不明の方

男性(69)       川内村下川内     流されたとみられる車が発見。近くに勤務先の宿舎兼事務所がある

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