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台風19号 広域浸水の宮城・大郷町 決壊前提の避難、犠牲者ゼロ 訓練浸透、住民9割早々と

決壊した堤防を指し示す高橋精男さん=宮城県大郷町で10月24日、竹内麻子撮影

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 台風19号で多くの川が氾濫し多数の犠牲者を出す中、宮城県大郷町では、町内の堤防が決壊したにもかかわらず、犠牲者が一人も出なかった。どんな背景があったか。現場を歩くと、その理由が見えてきた。

 家屋の窓ガラスは割れて家財が散乱し、アスファルトはめくれ上がっていた。吉田川沿いの中粕川地区。修復作業が進む堤防を見ながら、近くに住む元区長の高橋精男(あきお)さん(71)がつぶやいた。

 「なんとかもってくれと祈ってたけど、切れ(決壊し)ちゃったね」

宮城県大郷町の浸水域と決壊場所

 人口約8000人の町内を横切るように流れる吉田川。奥羽山脈から石巻湾に流れ込む鳴瀬川の支流で、国の1級河川に指定されている。大雨が降ると一気に水量が増えるため、地元では「暴れ川」と呼ばれる。台風19号により宮城県内で死者19人を出したが、町内では犠牲者はいなかった。あの時、住民はどう動いたか。

 町から「避難準備・高齢者等避難開始」情報が出たのは12日午後2時過ぎ。地元消防団が避難を呼びかける中、高橋さんも1人暮らしの家を回り、約1・8キロ離れた高台にある避難所「大郷幼稚園」へ行くよう促した。105世帯311人のうち、支援が必要な数世帯は頭に入っている。避難指示が出たのは午後11時過ぎだが、「何度も訓練してきたので、ほとんどの人たちが徒歩や車で明るいうちに避難した」と振り返る。

 自身も住民を避難させた後、車で別の避難所へ。未明にじわじわと上昇する川の水位を調べていた。

 13日午前7時50分、吉田川の堤防が完全に決壊し、広い範囲が浸水。区内では深い所で3メートルに及び、ほぼすべての家屋で床上・床下に及んだ。ただ、9割以上の住民は事前に避難所や親戚宅に避難し無事だったという。取り残された十数人はヘリコプターやボートで救出された。

 今回、現地で聞き取り調査をした佐藤翔輔・東北大災害科学国際研究所准教授(災害情報学)は「どこか切れると思っていた」と話す住民の高い危機意識に注目する。「住民が河川氾濫のメカニズムやリスクを理解し、切れることを前提に動いたことが犠牲者ゼロにつながった」と評価する。

自主防災組織が作製した旗。門戸に掲げて安否確認に役立てるという=宮城県大郷町で、竹内麻子撮影

 吉田川周辺は1986年の台風10号による豪雨で1000棟以上の家屋が床上浸水しており、町や住民は防災に力を入れてきた。町は22地区で自主防災組織(自主防)の設立を促し、防災無線の受信機を全世帯に配布。2006年に自主防が作られた中粕川では、高橋さんがマニュアルを改定し川の水位をいち早くテレビで把握する方法を盛り込み、要支援世帯がひと目で分かるマップや、交通安全の黄色い旗にヒントを得た安否確認用の旗も作った。

 年1回の避難訓練では、門に避難済みを示す緑の旗を掲げて避難したり、助けを求める赤い旗を掲げたりして、スムーズな安否確認を練習した。高橋さんは「いざという時に無意識でも体が動くよう、繰り返し訓練した」と語る。

 佐藤准教授は「公助や共助も働いたが、住民が逃げることに注力した点が大きかった。近年は大雨が増え、ハード面には限界がある。避難しようという住民の意識を高めるなどソフト面の強化が必要だ」と話した。【竹内麻子】


町の避難情報と住民の動き

<12日>

午後 2時10分 大郷町が「避難準備・高齢者等避難開始」情報。消防団や高橋さんが住民に避難を呼びかけ。明るいうちにほとんどの住民が避難

   6時40分 町が避難勧告

  11時10分 町が避難指示。避難住民が9割以上に

<13日>

午前 7時50分 吉田川の堤防が決壊

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