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英国の総選挙 EU離脱問い直す機会に

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 英国と欧州の未来を左右する選挙となる。欧州連合(EU)離脱を巡って揺れる英国で来月12日に総選挙が実施される見通しになった。

 EUとどのような関係を持つのか。有権者と政党が議論を深め、3年半近くに及ぶ混乱の収束に道筋を付ける機会となることを望みたい。

 総選挙は「EU離脱か、残留か」が問われた2016年の国民投票後2回目となる。国民投票時には、離脱の具体像は明らかでなく、EUに関する誤った情報も流れた。17年総選挙はEUとの離脱交渉前だった。

 今回、保守党のジョンソン首相はEUと新たな離脱協定案を取りまとめた上で総選挙に打って出た。青写真が提示されている点で従来と状況は異なる。離脱の意味や影響を見極めた上での選択が求められている。

 新協定案によれば、英国はEUの関税同盟から抜ける一方、英領北アイルランドにはEUの通関ルールが適用される。最大野党・労働党は離脱交渉の仕切り直しと、再度の国民投票の実施を掲げる。「離脱」「残留」を旗印とする野党もある。

 英政府とEUの距離は揺れ動いてきた。欧州統合推進に反対のサッチャー元首相は拠出金の割に恩恵が少ないから「金を返して」と詰め寄った。一方、親EUのブレア元首相はユーロ参加さえ視野に入れた。

 世論も割れている。国民投票では離脱派が残留派を上回ったが、最近の世論調査では「離脱は間違い」が47%で、「正しい」は41%である。

 英国は議会政治の長い伝統を持つ「議会制民主主義の母国」だ。保守党と労働党の2大政党制が機能していた時期もある。だが、離脱問題で両党内が分裂したことから議会が迷走し、政治の混乱を招いた。

 7月に就任したジョンソン氏は「10月末までに離脱する」と約束していたが、新協定案を議会で通せず、果たせなかった。反ジョンソン派への全面対決の強硬姿勢で、議会の信頼を失ったことが大きい。

 政治家が国民の政治不信をあおるような言動は代議制の基盤を揺るがす。議会反対派を「離脱を阻む抵抗勢力」と位置づけ、世論の分断に拍車をかける振る舞いは慎むべきだ。

 新たな離脱期限は来年1月末である。残された時間は少ない。英国は総選挙を通じ針路を明示すべきだ。

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