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第69期王将戦リーグ特選譜

1敗対決は広瀬竜王が勝利 思わぬ誤算で羽生九段が2敗に後退

王将戦リーグの対局を終え、初手から対局を振り返る広瀬章人竜王(右)と羽生善治九段=東京都渋谷区の将棋会館で2019年11月1日午後6時18分、丸山進撮影

 リーグ開幕から立て続けに対局が続いていた今期の王将戦リーグだが、10月21日に藤井聡太七段が羽生善治九段を破って3勝1敗と暫定首位に立った対局から本局までの11日間、間隔が空いた。いかにも後半戦の開幕といった感じがある。

 藤井に敗れた羽生は今期初黒星で2勝1敗となった。4期ぶりの王将戦七番勝負登場で、王将戦通算13期目の獲得、そして前人未到のタイトル通算100期を達成するためにはこれから白星を重ねることが必要になる。王将戦の規定により、挑戦プレーオフは前期の順位が上位の2人。仮に4勝2敗でプレーオフになった場合は、予選を勝ち抜いて順位5位に位置する羽生や藤井はプレーオフに参加できる保証はない。

 対する広瀬も2勝1敗で、勝者が藤井と並んで首位になる。挑戦権争いに関しては重要な1局。広瀬は竜王戦七番勝負で豊島将之名人の挑戦を受け、2連敗の苦しいスタートになったが、A級順位戦で糸谷哲郎八段を早い終局で破ったり、棋王戦ではベスト4に進出したりするなど好調を維持している。

 この両者の対局、互いに持ち時間をいっぱいに使う接戦が予想されたが、意外な展開になった。

<第69期大阪王将杯王将戦リーグ6回戦>

2019年11月1日

持ち時間各4時間

場所・将棋会館

▲広瀬章人竜王(2勝1敗)

△羽生善治九段(2勝1敗)

▲2六歩1 △8四歩  ▲2五歩  △8五歩

▲7六歩1 △3二金  ▲7七角1 △3四歩

▲6八銀  △7七角成 ▲同 銀  △2二銀

▲4八銀  △3三銀  ▲7八金  △6二銀

▲4六歩  △4二玉  ▲4七銀  △7四歩

▲3六歩  △7三桂  ▲6八玉1 △6四歩2

▲9六歩1 △9四歩1 ▲3七桂  △6三銀1

▲2九飛1 △8一飛1 ▲4八金  △6二金2

▲1六歩  △1四歩  ▲6六歩1 △5四銀1

▲5六銀1 △5二玉3 ▲7九玉2 △4二玉1

▲4五桂6 △2二銀7 ▲7五歩1 △同 歩1

▲5三桂成 △同 玉  ▲7四歩  △4四歩1

▲4五歩1 △5五歩17 ▲7三歩成2△同 金

▲4六桂  △5六歩7 ▲5四桂  △同 玉

▲4四歩2(第1図)

 将棋界で数々の記録を作ってきた羽生九段だが、これから先の棋士人生を考えても、なかなか将棋界最多記録に到達しないのが、敗数の記録。負けが多いのは一見不名誉に思えるが、将棋界では番勝負やリーグ戦に多く登場した証しとしてある種特別な記録になっている。現在、最多敗数の記録を持っているのは、引退した加藤一二三九段の1180敗(1324勝)だが、羽生は先日600敗(1446勝)を記録した。まだ加藤の敗数の半分にも到達していない少なさで、通算勝率は7割台を維持している。歴代棋士でも傑出している成績に改めてうならされる。

 戦型は角換わり相腰掛け銀。以前の羽生なら後手番では相手の作戦を受けて立つことが多かったが、「将棋プレミアム」で解説を務めた千葉幸生七段は「最近の羽生九段は一手損角換わりや横歩取りなどで力将棋に持ち込むことが多く、角換わりを受けて立つのは珍しい」と言う。

 待機策をとる後手に対し、広瀬は▲4五桂と跳ねて主導権を握りに出た。▲7五歩△同歩の突き捨てから桂を成り捨てて1歩を稼ぎ、▲7四歩と桂頭の弱点を突いた。以下、勢いの赴くまま第1図に。後手玉は四段目まで引きずり出された。この進行は実戦例もあり、結論は出ていない。

 第1図以下の指し手

△7四桂19 ▲5六歩4 △5三玉1 ▲5五歩6

△8六歩13 ▲同 歩11 △7六歩21 ▲同 銀5

△8六桂10 ▲8二歩11 △7八桂成6▲同 玉1

△5六角3 ▲6七桂30(第2図)

 局後に本局の感想を聞かれた広瀬は「お互いに妥協しないと、本譜のようになるかもしれないとは考えていました。すぐに詰む詰まないの重要な局面になります。戦前には(自玉は)詰まないとは思っていましたが、実戦で読んでみると……」と語っていた。羽生も本譜の進行はある程度覚悟していただろう。あまり時間を消費せずに進んでいる。

 △7四桂で羽生も反撃の態勢をとった。広瀬は羽生玉を三段目まで押し戻し、中央の厚みで勝負する構えだ…

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山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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