メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

東京国際映画祭

「列車旅行のすすめ」(スペイン/フランス) 平均評価★×5.8

「列車旅行のすすめ」(スペイン/フランス)

 コソボ戦争に赴いて片腕で帰還した男、不幸な結婚を繰り返す女、正体不明の医師……。複数のエピソードが互いに絡み合いながら、奇想天外な結末へとまい進する熱量の高い物語。何が現実で何が虚構か? スペインの新鋭が紡ぐストーリーテリングに注目。(スペイン/フランス、アリツ・モレノ 監督)

 語り手の話に登場する人物の回想の中に出てくる人の話、といった具合に、幾重にも入れ子になった語り口が鮮烈。しかも一つの話が終わってから、「……はウソでした」とひっくり返したりもする。誰の話を聞いているのか判然としなくなる混乱も含めて、陶酔的。しかも、それぞれのエピソードが奇想天外でぶっ飛んでいる。しばしば下品で不道徳、それでもというか、それゆえに眉をひそめ爆笑しあっけにとられ、目をそらせない。

 あふれんばかりの才気で、映画は抜群に面白い。では、グランプリかと言われると……。社会性とか、鋭く深い人間洞察まで求めるのは、酷というものだ。 

 「私の映画はぶっ飛んでいる」。記者会見でアリツ・モレノ監督が日本語でこう言って会場を笑わせた。実際、奇妙な人間が次々と登場。彼らは自らの人生を語るが、それが妄想と真実が交ざり、その中に登場する別の人間の物語が始まるなど、重層的で複雑な構成をしている。原作はスペイン国内で熱狂的な人気を博した同名小説。奇抜な構成の具現化や、繊細で迫力ある映像など、とても長編デビュー作とは思えない力強い作品だ。

 ただ個人的には、犬への偏愛を極めて恐ろしい形で恋人に強要する描写など、生理的に拒絶してしまうシーンがいくつかあって点数は辛め。監督賞ならあり得るかも。

 現代のスペイン映画界には優れたストーリーテラーが多く、ひねりの利いたスリラー&ミステリーの量産国でもあるが、これほど奇抜で過激な映画にはそうそうお目にかかれない。アリツ・モレノ監督が語っているように、ジャンル分けは極めて困難。人間と…

この記事は有料記事です。

残り1021文字(全文1821文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 小学校でクラスター発生か クラスメート5人感染 北九州・新型コロナ「第2波」

  2. まさにアリの一穴…「ツイッター世論」は、なぜ、安倍政権を動かせたのか

  3. 「ウイルスある程度まん延」専門家が読む北九州の現状 他都市も再燃警戒

  4. 「警官に押さえ込まれけが」 渋谷署前で200人が抗議デモ クルド人訴えに共鳴

  5. アベノマスク8億円検品、穴だらけ 不良発覚後の契約、消えた瑕疵担保責任…

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです