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増える「カスハラ」 現場任せにしていないか

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 悪質なクレームなどで店員や従業員に大きなストレスを与えるカスタマーハラスメント(カスハラ)が、社会的な問題になっている。

 厚生労働省のデータによると、顧客や取引先からのクレーム対応で精神障害の労災認定を受けた人が過去10年間で78人に上り、うち24人が自殺していた。見過ごせない事態だ。

 厚労省の企業ヒアリングでは、暴力的な行為や金品のゆすり、執拗(しつよう)な叱責や営業時間後にも退去しない行為などが、カスハラの例として挙げられた。過去には、コンビニの店長を土下座させ、恐喝罪で有罪になった事例がある。

 クレームは本来、企業が丁寧に耳を傾けるべきものだ。サービスに至らない点や商品の不具合などがあれば改善する。結果的に業績向上につながる可能性もある。

 一方で、カスハラは苦情を伝えるにとどまらない著しい迷惑行為である。顧客と企業のあるべき関係から逸脱している。

 小売業などの産業別労組が実施した調査では、組合員の約7割が「迷惑行為に遭遇した」と回答した。民間企業の調査では、苦情対応担当者らの半数以上が最近3年でカスハラが増えたと感じている。

 接客対応を批判する投稿が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で拡散されるようになり、従業員が受けるストレスが強くなっている面もあるだろう。

 背景には、バッシングなど他人に不寛容になった社会があると指摘する心理学の専門家もいる。企業の「顧客第一」の姿勢が誤って伝わり、「客なら何でも許される」という風潮につながっているのかもしれない。

 企業には労働者への安全配慮義務がある。カスハラに対する姿勢を明確にし、現場の個人任せにせず、組織として対応すべきだ。

 国際労働機関(ILO)は6月にハラスメント禁止条約を採択した。対象にはカスハラも含まれる。

 厚労省も、パワーハラスメント防止のための企業向け指針を策定している。だが、素案は、カスハラ対策について相談体制の整備などが望ましいと指摘するにとどまっている。企業任せにするのではなく、カスハラへの具体的な対応の判断基準を指針で示すべきだ。

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