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避難勧告?意味分からず 台風災害情報、戸惑う外国人

「膝下くらいまで水につかった」と浸水した高さを指さすラミチャネさん。清掃を終え生活できるようになった=栃木市湊町で2019年10月21日午後2時16分、萩原桂菜撮影

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 89人の死者を出した台風19号では外国人も被災した。災害情報を伝える携帯電話の緊急速報メールが届いても文章が理解できず、避難所の場所や意味が分からずに自宅にとどまったケースもあった。日本で暮らす外国人が増える中、どのように災害情報を伝えるかという課題が浮かぶ。【萩原桂菜、斎藤文太郎】

     雨が強くなった先月12日昼、ネパールから来日して4年になる栃木市のインド料理店店員、ラミチャネ・チュラ・マニさん(32)のスマートフォンが突然、大きな音を出した。市が配信した緊急速報メールだが、漢字仮名交じりの文章は理解できなかった。その後も「避難勧告」「土砂災害警戒情報」など10回を超えるメールが届き、「怖かった」。メールをネパール語に翻訳した知人のフェイスブックを見たものの、避難所がどんな場所かイメージできず自宅にとどまった。

    浸水したグエンさんの寮の一室。畳や扇風機が散乱していた=福島県郡山市水門町で2019年10月14日(熊耳泰則社長提供)

     翌13日午前0時過ぎ、アパート1階の自室に水が流れ込んだ。妻(30)と生後3カ月の長男を連れて脱出。2階の住人の部屋に入れてもらい難を逃れた。自宅は約40センチの高さまで床上浸水した。ラミチャネさんは通訳を通じ、「あと2~3分遅れればドアが開かず、赤ちゃんの命に危険があったかも」と振り返る。

     「前、きれい。今、汚い」。阿武隈川が氾濫し、浸水した福島県郡山市の工業団地。勤務先の工場で泥を洗い流していたベトナム人技能実習生、グエン・バン・ハンさん(27)はたどたどしい言葉でつぶやく。溶接技術を学ぶため昨年12月に来日し、建設現場で使う足場などの修理や管理に従事していた。簡単な日本語での会話はできるが、読み書きはまだ難しい。

     先月12日は勤務先に近い平屋建ての寮に同僚2人といた。テレビで台風の接近は知っていたが、危険だとは思わなかった。届いた緊急速報メールも日本語で理解できない。翻訳アプリを使ったものの、表示された避難先がどこなのか分からなかった。

     勤務先の熊耳(くまがみ)泰則社長(45)は台風の進路に危機感を抱き、日没前にグエンさんらを自家用車に乗せて自宅へ連れ帰った。熊耳社長は「メールは漢字が多く、読めるはずがないと思った」と話す。水が引いた寮は、泥まみれの床に冷蔵庫が倒れ浮き上がった畳や家具が散乱していた。グエンさんは「悲しい」とうつむいた。

    伝達方法、自治体任せ 専門家「やさしい日本語」提案

     外国人に災害情報を伝える取り組みは、決して十分とは言えない。

     内閣府が3月にまとめた災害時の情報伝達に関するガイドラインでは「多言語化が重要」としているものの、具体的な方法は自治体任せだ。栃木県内で緊急速報メールを外国語で配信している自治体はないとみられ、総務省も全国の状況を把握していない。

     緊急速報メールについて、携帯電話会社の対応もさまざまだ。NTTドコモは翻訳アプリと連動させる機能などがある。KDDI(au)では気象庁の緊急地震速報などを海外5カ国語で受け取れるものもあるが、自治体からの避難呼び掛け情報は日本語で表示される。ソフトバンクには緊急速報メールを外国語に翻訳する機能がない。一方、気象庁は9月からホームページで気象情報などを海外11カ国語で提供し始めた。

     こうした中、あえて日本語で伝えようとする取り組みもある。弘前大の佐藤和之教授(社会言語学)は阪神大震災をきっかけに、災害時に外国人へ伝えることを想定した「やさしい日本語」を考案し、普及に努めている。これまで700以上の自治体や団体がホームページや防災ガイドブックの作製に活用しているという。たとえば「確認する」は「よく見(み)る」に言い換える。佐藤教授は「誰もが分かりやすい言葉を用い、注意を促すことが必要だ」と指摘する。【萩原桂菜】


    「やさしい日本語」の言い換え例

    危険  →危(あぶ)ない

    確認する→よく 見(み)る

    警戒する→気(き)を つける

    余震  →後(あと)で 来(く)る 地震(じしん)

    避難所 →みんなが 逃(に)げる ところ

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