メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

台風19号 福島 届かない救援の声 聴覚障害者、浸水自宅に取り残され

浸水した自宅で手話通訳者に被災状況を説明する丹野繁男さん(右)ときみ子さん夫妻=福島県伊達市梁川町で10月

[PR]

 台風19号の被災者に、助けに来た消防に気づかれず、浸水した自宅に取り残された聴覚障害者がいた。自力で救助要請できず、消防隊員の声も聞こえなかったためとみられる。文字で119番できるシステムもあるが、導入率は2割にとどまり、対応が急がれる。【岩崎歩】

 ともに聴覚障害がある丹野繁男さん(72)と妻きみ子さん(71)=福島県伊達市梁川町=は10月13日未明、豪雨に襲われた。前日に手話通訳者から避難を呼び掛けられ、避難勧告のエリアメールも携帯に届いていたが「大丈夫だろう」と考えていた。ペットの犬や猫も心配で、避難しなかったという。夫婦に雨の音は聞こえない。午前2時ごろ、きみ子さんが外を見て「自宅前が海のようになっている」と初めて異変に気づいた。既に床上浸水しており、急いで自宅2階に逃げた。

 消防が梁川町で救助を始めたのは午前3時ごろ。ボートで回り、助けを求める人がいないか確認した。丹野さん夫婦方の近くに住む女性は午前11時に救助された際「耳が聞こえない夫婦がいる」と消防隊員に伝えた。ところが消防隊員が2人の元に来ることはなく、水が引いた午後1時ごろまで自宅に取り残された。

 市によると、丹野さん夫婦は自力避難が困難な「避難行動要支援者名簿」に登録されているが、具体的な避難行動を定める「個別計画」は未作成で、消防との連携も取れていなかった。担当者は「対策を考えたい」としている。繁男さんは手話で「災害を甘く見た。早めの避難を心掛けたい」と自戒を込めて語り、きみ子さんも「待つしかなく、不安だった。ろう者がいる場所を行政の中で共有してほしい」と求めた。

 音声による119番が困難な聴覚障害者らのため、スマートフォンなどを使って文字情報で通報できる「Net(ネット)119緊急通報システム」がある。総務省消防庁によると、全国726消防本部のうち導入済みは168本部(6月1日時点)で、伊達市を管轄する消防も取り入れていない。2020年度末までに、導入済みも含めて578本部が導入予定という。

難聴79歳、自室で犠牲

 台風19号では、難聴で障害者手帳を持つ人も逃げ遅れ、犠牲になった。福島県須賀川市館取町の大淵広子さん(79)。避難の呼び掛けが聞こえなかった可能性がある。

 複数の知人らによると、大淵さんは数年前に夫を亡くし、1人暮らし。自宅近くの老人福祉センターに行き、カラオケを楽しむのが日課だった。

 同じアパートの60代女性は10月12日午後7時ごろ、避難するか聞こうと大淵さんの部屋を訪れた。ガラス戸をたたいたが反応がない。「避難したのだろう」と思い自室に戻った。

 市が大淵さん宅周辺に避難指示を発令したのは午後7時15分。防災無線や広報車が地域にその内容を伝えた。だが大淵さんは避難していなかった。アパートは1階まで水没し、2日後の朝、部屋で遺体が見つかった。

 大淵さんは補聴器をしていたものの、寝る時は外すこともあったといい、知人は「防災無線が聞こえなかったのでは」と話す。12日に部屋を訪ねた女性は「もっと強く、戸をたたいていれば……。この気持ちは忘れられない」と目に涙をためて話した。【渡部直樹】

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 児童手当受給世帯、子供1人につき1万円支給へ 政府コロナ緊急経済対策

  2. 医療従事者153人の感染判明 院内感染も発生 医療崩壊の懸念 新型コロナ

  3. 横浜の「コロナファイター」卵 研修医2人感染 3月下旬に連日同期会やカラオケ

  4. 各国で計画進むBCGの臨床試験 感染予防へ高まる期待 「命の危険」懸念も

  5. 現金給付 「自己申告制」で1世帯30万円支給へ 「収入減」示す書類求める

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです