山口県にある米海兵隊岩国基地の戦闘機部隊で規則違反が横行している実態が明らかになった。上部組織の在沖縄海兵隊が調査した。
飛行中に酸素マスクを外して手放しで操縦したり、読書したりしている様子を自撮りしたほか、眠気を誘う医薬品を訓練時に服用していた。
手放し操縦は緊急時に対応が遅れ、酸素マスクを装着しないまま緊急脱出すれば命に関わる。眠気から瞬時の判断がにぶるおそれもある。
いずれも重大事故につながりかねない危険な行為だ。驚くのは、統率すべき隊長が率先して画像を撮影し通信アプリで共有していたことだ。プロ意識の希薄さにあぜんとする。
この不祥事は、昨年12月に高知県沖でこの部隊の戦闘攻撃機と別の部隊の空中給油機が夜間訓練中に接触して墜落し6人が死亡・行方不明になった事故の調査過程でわかった。
原因は戦闘機の操縦士の操縦ミスとみられるが、乗員2人から睡眠導入剤の成分が検出された。ともに服薬の許可を得ていなかった。
明らかになった問題はこれだけではない。2016年にも同様の接触事故が起きていたのに、当時、海兵隊上層部に報告されていなかった。
このときは、戦闘機が給油ホースを損壊させたものの、負傷者はなく、軽微な事故として詳細な調査は行われなかったという。
再調査の結果、操縦士の飛行制御データ入力の問題とされたが、指摘された問題点は任務計画の不備やリスク管理の欠陥など広範に及んだ。
当時、詳細な調査が実施され、是正措置が適切に講じられていれば、同じような事故を繰り返すことはなかったかもしれない。
より深刻なのは16年の事故が日本側に伝えられていなかったことだ。当時、戦闘機は沖縄県の嘉手納基地周辺空域で任務中だったとされる。
日米安全保障条約に基づき日本は米国に基地を提供し、米軍が日本を防衛する。米軍の事故は日本の安全保障にとってひとごとではない。
米軍は日米間の合意に沿って通告するという。だが、事故の過小評価は米軍内の問題に限らず、日本の信頼も損ねたことを重くみるべきだ。
米軍の事故の通報に関して、より透明性が高いルールづくりに取り組むべきではないか。