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日本高校野球連盟の有識者会議が、大会期間中の1週間に1人の投手が投げられる球数を「500球以内」に制限する答申案をまとめた。
案によれば、来春の選抜大会から3年間は罰則なしの試行期間とするという。答申を受けて、日本高野連は今月末に理事会を開く。
昨年夏の甲子園で準優勝した秋田・金足農高の吉田輝星投手(現日本ハム)は3回戦から決勝まで5日間(4試合)で570球を投げた。新しい規定なら、決勝は早々に降板していたことになる。
故障の原因となる投げ過ぎは長年の懸案だ。昨年12月、新潟県高野連が「球数が100球に達した投手は次の回から登板できない」との独自規定を発表し、議論が本格化した。
全国的な検討が必要なため、新潟だけでの実施は見送られたが、高校野球の元監督や医師ら有識者が規定作りのために協議を重ねてきた。
指導者の間では反対の意見も根強い。複数の投手がいる強豪校が有利で、部員の少ない学校との差が広がる▽投手に多く投げさせようとファウルで粘る「待球作戦」が横行し、公正な試合にならない――などだ。
しかし、故障で野球を断念する子どもが多い中、有識者会議が投手の健康を重視した点を評価したい。長く野球を楽しむためには、早い時期から障害予防に万全を期すべきだ。
中高生の投手が肘を痛めて手術を受けるケースが増えているという。「トミー・ジョン手術」と呼ばれる肘の靱帯(じんたい)再建手術だ。米国ではその対象となる選手の低年齢化が問題になっている。
現状に危機感を持つ米国球界は、対策を取っている。米大リーグと米国野球連盟が策定した「ピッチスマート」というアマチュア投手向けの基準だ。たとえば17~18歳は1日に投げる上限を105球とし、球数に応じて休養日数も定めている。
日本では小中学生の硬式リーグや軟式の学童野球が球数制限を採用している。今回は日本高野連単独の取り組みだが、球界全体が連携し、多角的に議論を重ねてほしい。
答申案には、3連戦を回避する日程の設定や、障害の早期発見につながる検診システムの構築、指導者ライセンス制度の検討なども盛り込まれた。変革は始まったばかりだ。