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社説

ベルリンの壁崩壊30年 新たな分断生まぬ努力を

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 東西ドイツを分断し、冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊して30年となる。自由と民主主義は東欧に広がったが、排外的な新しい「分断」の動きが出ているのを案じる。

     壁は東ドイツが市民の往来を禁じるため1961年から建設し、全長約155キロに及んだ。資本主義と社会主義の体制間で民族が引き裂かれ、米ソ対立の最前線となった。

     「鉄のカーテン」を壊したのは市民の力だった。壁によじ登り、つるはしを振るう若者たちの姿に世界が高揚し、西側の勝利による対立の「歴史の終わり」さえ予感させた。

     欧州の歩みを体現する2人の政治家がいる。ドイツのメルケル首相とハンガリーのオルバン首相だ。

     メルケル氏は幼少時代を東独で過ごし、物理学の研究者になった。だが、壁の崩壊を機に市民政党に入り、政治の道へ進んだ。「自由の大切さが身に染みている」と語る。

     リベラルな価値観を掲げ、欧州の難局に立ち向かった。ユーロ危機への対応で存在感を発揮し、欧州に難民らが殺到した2015年の「難民危機」では多数に門戸を開いた。

     懸念されるのは、排外主義的な潮流の広がりだ。グローバル化や欧州連合(EU)に対する人々の不満に乗じて、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な政治勢力が伸長している。

     オルバン氏はその筆頭格だろう。冷戦下の旧体制時代には駐留ソ連軍の即時撤退を訴えた活動家だった。だが、若き改革派はやがて「反移民」を看板にするようになる。

     「キリスト教に根差した欧州文化がイスラム教徒主体の移民に脅かされる」。そう主張し、難民や移民を阻止するための越境防止フェンスを隣国セルビアとの国境に設置した。

     欧州諸国では90年以降、総延長約1000キロに上る越境防止フェンスが建設されたという。ベルリンの壁の約6倍もの長さである。

     欧州は岐路に立っている。メルケル氏の「自由で開かれた欧州」への世論の風当たりが強まり、「自国の要塞(ようさい)化」を進めるオルバン氏の路線に押されているように見える。

     EUの標語は「多様性の中の統合」だ。「無知と偏狭の壁を壊して」とのメルケル氏の訴えに欧州市民は耳を傾ける時だ。他者を遠ざける新たな壁を造り出してはならない。

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