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今週の本棚・この3冊

ベルリンの壁の崩壊30年と文学 山本浩司・選

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 <1>東西ベルリン動物園大戦争(ヤン・モーンハウプト著、黒鳥英俊監修、赤坂桃子訳/CCCメディアハウス/2860円)

 <2>私(ヴォルフガング・ヒルビヒ著、内藤道雄訳/行路社/3740円)

 <3>もっと、海を 想起のパサージュ(イルマ・ラクーザ著、新本史斉訳/鳥影社/2640円)

 ベルリンは贅(ぜい)を極めた文化都市だ。三五七万と横浜市ほどの人口にオペラハウスが三、大劇場が四館、交響楽団も総合大学も二つずつある。一九八九年まで、壁をはさんで睨(にら)みあう東西ドイツが、経済効率を二の次に国家と体制の威信をかけて競争に明け暮れたおかげだ。政体としての東はとうに西に吸収合併されたが、二重の文化施設は案外しぶとく生き残っている。

 過去三十年間の文学を振り返ると、マスコミが期待を煽(あお)った「ザ・壁小説」は結局あらわれなかった(作家たちの力不足というよりも、社会派の強いドイツでもそんな直球で勝負する時代ではなくなった証だろう)。しかし統一ドイツ文学は東からの新しい声を取り込むことで八〇年代の停滞期を抜け出せた。最近のノーベル賞作家のうちグラスもミュラーもハントケも東欧にルーツをもつようにドイツ文学にとって東はつねに欠かす…

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