毎日新聞
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性暴力を撲滅するため、刑法の改正を求めるイベント「One Voice(ワンボイス)フェス!」が10日、東京都内であった。性暴力に抗議しようと今年4月に東京都内で開催された「フラワーデモ」が全国に広がる中、イベントの参加者は2020年の刑法見直しを目指して活動していくことを誓った。【竹内麻子】
イベントは、性暴力被害者らでつくる一般社団法人「Spring(スプリング)」が主催し、約60人が参加した。被害者一人一人の切実な声を社会に響かせ、法改正を実現しようと、イベント名を「ワンボイス」と名付けた。
イベントでは、フラワーデモの呼びかけ人で作家の北原みのりさんと、スプリング代表の山本潤さんが対談。北原さんは今年3月、実の娘に性的暴行をしたとして準強制性交等罪に問われた父親に無罪が言い渡されるなど性暴力事件の無罪判決が相次いだことに触れ、4月11日に最初のフラワーデモをJR東京駅前で始めたのは「もう我慢できない。同じような被害にあった人に『一緒にいるよ』という気持ちを伝えたい」との思いがあったと回顧。「今まで被害者は勇気がなければ話せないと言われていたけど、こういった安心できて信じてくれる場があれば、話したいし、なかったことにしたくないんだということが分かった」と語った。13歳の時から実父による性暴力を受けていた山本さんは「限られた場所でしか話せなかったことを、公道で多くの人が声を上げて伝えるようになったのは画期的だ」とうなずいた。
フラワーデモは各地の有志が地元で開催するようになり、今では一度に23都道府県の25都市で約1000人が参加する規模に成長した。長野市で6月にフラワーデモを始めた会社員の水野美穂さんは、東京でのデモを知り「長野でも誰かやってくれないかな」と期待したが、自ら主催することを決意したという経緯を明かし、以後も毎月、デモを続けていると話した。水野さんは「(長野は)いまだに『女のくせに』と言われるような保守的な土地柄だが、空気を変えていきたい」と力を込めた。また、東京会場の参加者は仙台や福岡など全国各地のデモ主催者とテレビ電話で思いを伝え合った。
刑法の性犯罪規定は17年6月に改正されたが、加害者の暴行や脅迫がないと性犯罪が成立しない「暴行・脅迫要件」が撤廃されなかった点などについて、被害者がさらなる改正を訴えている。同法の付則は「(改正から)3年後に必要があれば見直しをする」としており、スプリングは同意のない性行為を罰する「不同意性交罪」の新設などを求めている。
イベントに参加した寺町東子弁護士は「常識が変わらないと法律は変わらない。来年の春ごろに改正のための検討会が法務省に立ち上がる必要がある」と指摘。山本さんは「私たちのこの気持ちを変化につなげないといけない」と訴え、署名やメッセージを掲げた本人の写真を国会に届けるキャンペーンへの参加を呼びかけた。また支援金を募るクラウドファンディングを10日に始めたことを発表した。
最後に、参加者はそれぞれ花びら形の紙にメッセージを書き、それを集めて大きなハスの花を作り上げた。泥沼の中からきれいな花を咲かせるハスに、深刻な性暴力被害から立ち上がるイメージを重ねたという。社会に女性の露出度の高い服装が性犯罪を招くといった偏見もあるため、「思いっきり好きな服装で電車に乗ったり街を歩きたい!」と記した参加者もいた。
イベント後、足立区の会社員男性(34)は「デモにも何度か参加したが、本当に同じ思いを共有している人がいるんだと感じた。刑法の改正は絶対に必要だ」と語った。
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