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待ったなし雪のシーズン 迫る寒さの長野・飯山の避難所 台風19号1カ月

椅子やテーブルなどの災害ごみがうずたかく積まれた旧城南中グラウンド=飯山市静間で2019年11月4日午後2時24分、大澤孝二

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 台風19号で千曲川支流・皿川などが氾濫した長野県飯山市。同市によると、718棟が浸水被害を受け、市内に開設された11カ所の避難所には、10月28日の閉鎖までに最大で358人(飯山公民館)が身を寄せた。日本有数の豪雪地帯・飯山には、あと1カ月もすると雪が降り厳しい寒さが迫る。【大澤孝二】

 日中でも上着がないと冷たい空気が通り抜けて寒さを感じ、土と消石灰が混じった臭いが漂う街を巡った。住宅の周囲には災害ごみが積まれ、いまだに周辺の泥を水で流している住民もいて、被災者は浸水した1階での生活を奪われ、不安の中で過ごしていた。

 災害ごみを片付けていた住民に話を聞くと「被災時には報道のカメラも来て被災の状況を伝えたが、今はほとんど報道されず、市民がどう思い、何に苦労しているのか知ってもらうことができない」と不満を漏らした。

茶色い泥水(手前)に家財道具が浮いている山本節夫さん宅の居間=飯山市北町で2019年10月13日午前3時半(山本さん提供)

 飯山市街を見下ろす飯山城址(じょうし)公園付近に暮らす、同市北町の山本節夫さん(72)は、被災から1カ月近くがたっても自宅の1階は片付けができず「危なくて素足で歩けないので……」と長靴で過ごす。

 山本さんは台風が上陸した10月13日の午前3時ごろ、1階の居間で就寝中、足に違和感を覚えた。起きてみると、足元にまで水が来ていることに驚き、衣服や通帳など必要なものを慌てて取り出して避難の準備をした。その最中にも浸水が続き、屋外に避難しようと玄関に向かった。

 居間に置いてある市の防災無線が避難を呼び掛けたのは同3時20分だったが、玄関付近にいて、膝まで水につかっていた状況に動揺もあり、無線は「聞こえなかった」という。

皿川の堤防決壊部分(左)と、泥がたまって使えなくなり滑り台だけが残る公園=飯山市北町で2019年11月4日午前11時半、大澤孝二撮影

 同時刻に無線を聞いた隣人は「城山公園に避難する」と膝まで水につかりながら避難していったが、山本さんは「もう避難できる状況じゃない」と屋外への避難を諦め、2階にとどまることを決めた。無線より前に地元の消防団が皿川の堤防決壊に気づき、半鐘を乱打して知らせたが、皿川から離れた山本さん宅には聞こえなかった。

 翌日以降、消防の懸命な排水作業で水は半日程度で引いたが、1階のテレビ、冷蔵庫などの家財道具は全て使えなくなり、冬に備えて洗濯していた衣類や、代々大切にしてきた仏壇も水につかった。1階には座ることすらできず、2階のみの生活を強いられている。

 市は「家や店の前にごみを出せば市が回収する」と呼び掛け、災害ごみの運搬を10月22日まで行ったが、市内に1カ所しかなかった災害ごみの仮置き場、旧城南中のグラウンドは大量の廃材や家具などが山積みとなり、悪臭が漂う。同27日にはそのグラウンドへの搬入もストップした。

 市は、個人のごみは市に「被災廃棄物処分減免証明書」を提出すれば市の焼却場「エコパーク寒川」に無料で持ち込めるとする。しかし軽トラックなど運搬手段を持たない世帯にとって、市の中心部から片道30分以上かかる焼却場への持ち込みは大きな負担で、山本さんは「運び込む人手もないし、個人では限界がある」と嘆く。

    ◇

 同市に住む40代男性は、10月12日の夜は2階の寝室で寝ていたが、翌午前3時ごろ、1階から異音が聞こえたため様子をのぞき込むと、既に床上1メートル近く浸水していたという。

 防災無線より前に鳴っていた半鐘には気づいていたが、無線による避難指示はなく、避難をためらった。同3時半ごろ防災無線の避難勧告を聞いて家族での屋外への避難を決意。水につかりながら安全な場所に逃れた。

 1階の家具は全てが災害ごみになり、家族や親戚のほか、1日だけ来た5、6人の災害ボランティアの手を借りて畳や家具全てを撤去。居間は柱と床を支える骨組みだけが残った。2階で食事など生活はできるが、1階は地面がむき出しで屋内でも寒く、消石灰や消毒の臭いが漂い、今まで日常生活があったとは思えない光景だ。

 風呂は使えず、近隣の温泉施設などに通う日々。「1階は全面改装しなければならないが、資金面も見通しがつかず、いつになったら日常が取り戻せるか分からない」と消石灰で白く染まった居間を見て肩を落とす。

 市は2~4日に罹災(りさい)証明書の発行手続きを行い、家屋の修繕などの生活相談に応じるとしているが、皿川氾濫を予測していたのか、防災無線での避難指示が的確だったのかについては「調査中」としている。原因究明には時間がかかり、今後の災害対策は不透明なままだ。

 被災地を敬遠してスキー客の減少も懸念される中、雪が本格化するまで時間はない。市民の「日常」をいかに早く復旧できるか、対応は待ったなしだ。

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