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台風19号 10人犠牲 宮城・丸森の夜「想定外」次々

大規模に土砂崩れが起こった場所で行方不明者の捜索をする警察官ら=宮城県丸森町で2019年(令和元年)10月16日午前10時14分、平川義之撮影

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泳いで2階へ/災害本部孤立

宮城県丸森町で死者が発生した災害と堤防決壊箇所

 台風19号の上陸から12日で1カ月。死者10人、行方不明者1人と、市町村単独では最大の犠牲者を出した宮城県丸森町ではあの日、何が起きていたのか。町の職員や住民たちの証言から検証する(年齢は10月13日現在)。【村田拓也、吉田勝、藤田花、滝沢一誠】

 山に囲まれ、阿武隈川の舟下りやキャンプ場など観光が盛んな丸森町。一方、阿武隈川の支流をはじめ多数の川を有し、盆地という地形もあって過去に何度も水害に遭ってきた。

 10月12日は、朝からしとしとと雨が降っていた。午前8時半、町役場に総務課長や消防防災班の職員らが登庁。午前9時半には消防団に出動が要請された。

 正午前、認知症の高齢者16人が入居するグループホーム「ひまわりの郷(さと)」の女性職員は台風接近を伝えるテレビニュースを見て不安を募らせた。施設は低地にあり、平屋建て。午後に入ると雨脚が強まり、施設側は午後1時半、福祉避難所の開設を町に依頼した。

 町は午後2時、第1回災害対策本部会議を開き、複数の避難所を開設することや、社会福祉法人「ウェルフェア仙台」の施設に福祉避難所の開設を要請することなどを決める。午後2時40分に避難準備・高齢者等避難開始、同3時35分に避難勧告を伝えるエリアメールをそれぞれ町民に送った。ひまわりの郷の入居者16人は午後5時ごろ、ウェルフェア仙台に移送された。

 日が暮れると風雨は一気に強まる。山間部の筆甫(ひっぽ)地区では午後6時台の降水量が54・5ミリ、7時台が66・5ミリを観測。各地で浸水被害が発生し始めた。筆甫地区の佐久間正寿さん(46)宅には午後7時過ぎ、自宅1階の台所の窓から水が流れ込んできた。家の脇を流れる内川の支流が氾濫したのだ。低地の市街地でも浸水が始まる。竹谷地区の海川正則さん(72)宅には午後8時半ごろに水が押し寄せ、数分のうちに首までつかった。潜って泳ぎながら階段を捜し、2階に逃げた。

 土砂崩れも起きた。午後8時55分、山間部の耕野(こうや)地区の八巻(やまき)辰雄さん(58)宅に「ドーン」という音とともに土砂が流れ込んできた。10分後に再び土砂が流れ込み、八巻さんの母、ちゑさん(83)が巻き込まれて死亡した。一緒にいた孫の一生さん(37)は「おばあちゃんを外に出してあげていたら」と悔やんだ。町では土砂崩れで計5人が亡くなり、1人が行方不明になっている。

避難所にも水

 町や消防も慌ただしさを増す。町は午後7時50分、災害発生情報を伝えるエリアメールを住民に送信した。避難所となった町庁舎隣の「丸森まちづくりセンター」では屋上のドアの隙間(すきま)から水が漏れ出し、避難していた高齢者ら75人がマイクロバスで町庁舎まで避難した。この頃、阿武隈川の支流である内川、新川、五福谷川で次々と堤防が決壊した。決壊は3支流で計18カ所に上った。

 夜が明けた13日朝、市街地は広い範囲で冠水し、山間部には土砂崩れの跡があった。廻倉(まわりぐら)地区の男性(50)が地域を回ると、大槻利子さん(70)と母竹子さん(92)が住む家が土砂崩れで流され、土台しか残っていなかった。利子さん宅には近所に住む利子さんの妹夫婦も避難しており、利子さんと竹子さん、妹の夫の計3人が遺体で見つかった。妹の行方は分かっていない。男性は「集落で助け合って生きてきた。こんなことが起きるとは」と絶句した。

 ひまわりの郷の施設は結局、浸水せず、入居者たちは13日午前、ほっとした様子で施設に帰っていった。ウェルフェア仙台の施設長、佐藤光子さんは「今回はイレギュラーの対応だったが、今後の災害時の対応に生かしていきたい」と話す。

 市街地周辺では自宅にいて氾濫した水に巻き込まれた住民の遺体が次々と見つかった。浸水による死者は5人に上る。13日午前8時には474人が16カ所の避難所に身を寄せたが、避難しなかった住民も大勢いた。家に閉じ込められた住民たちは、自衛隊や海上保安庁のヘリコプターやボートで次々と救助された。山間部からヘリで運ばれた女性会社員(50)は「家では電話もつながらず、テレビも映らず、情報がなく不安だった」と声を絞り出した。

 町庁舎の周辺は冠水し、災害対策本部に詰めていた町職員たちも一時、孤立した。庁舎の電話もつながらず、町の防災担当者は「公用車も使えず、安否確認に時間がかかった。非常時に役場機能をどう維持するかは課題だ」と話した。

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