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台風19号1カ月 「仕事休める社会に」 宮城の男性、車で退社の妻亡くし

妻ゆきみさんの遺影を前に、会うことを楽しみにしていた孫の写真をみつめる石川喜巳穂さん=宮城県大和町で8日

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 10月の台風19、21号の影響による大雨で、無残にも多くの命が奪い去られた。愛する家族を失った人は「救えなかったのか」と後悔を募らせている。台風19号の上陸から12日で1カ月。

 「危ないからお父さんは戻って」――。乗っていた車が流され、犠牲になった宮城県大和(たいわ)町の石川ゆきみさん(58)は、夫喜巳穂(きみお)さん(66)を思いやる言葉を残し、命を落とした。

 ゆきみさんは10月12日、車でパートに出掛けた。風雨が強まった午後11時12分、同県利府町で仕事中だった喜巳穂さんは妻が勤務を終える時間を見越し、「スピードを控えめに、気を付けてお帰り下さい」と携帯電話でメールを送った。パート先の食品工場は隣町の富谷市にあり、自宅までは車で20分ほど。大丈夫と思いつつ、不安がよぎってのことだった。

 8分後、ゆきみさんから上ずった声で電話がかかってきた。「お父さん助けて。車が水かぶって止まっちゃった。浮いて流されている」。「助けに行くから待ってろ」と伝えて119番し、車で勤務先を飛び出した。県道は各所で冠水し、水をかぶってエンジンが3回ストップ。ようやく近くまで来たが、水位が膝まであって進めなかった。辺りを捜したものの、妻の車は見当たらない。13日午前0時20分ごろ、電話をかけるとゆきみさんの声は落ち着いていた。「消防署に電話したら助けに来てくれるって。危ないから戻って」。安心し、「分かった」と応じた。

 ところが、その後も助かったとの連絡は来ない。一方、自身の車も脱輪して動けなくなった。午前2時20分ごろに再び電話すると、ゆきみさんは「(携帯電話の)バッテリーがなくなりそう。消防と連絡できなくなるから切るね」と短く返した。それが最後の言葉になった。妻の遺体はその日の夕方、近くの川で水没した車内から見つかった。消防もたどり着けず、救うことはできなかった。現場は自宅から約2キロ。喜巳穂さんも、あと数百メートルまで近付いていた。「もっと捜していれば」。こみ上げる後悔に目頭を押さえる。

台風で流され、川に水没した石川ゆきみさんの乗用車。近くに花が手向けられていた=宮城県大和町鶴巣鳥屋檀ノ輿で10月17日

 ゆきみさんとは40年前に出会った。「一つの物事をぴしっとやり通す、芯の強い人だった」。共に1男3女を育て、関東にいる孫たちの成長を楽しみにしていた。9月に生まれた5人目の孫と今月、初対面するはずだった。

 「大雨の時は外出してはいけない」と訴える喜巳穂さん。「仕事を休む勇気を持ってほしいし、責任ある人が『会社に来なくていい』と判断できる社会になってほしい。そうすれば、妻の犠牲も意味あるものになる」と語気を強めた。【百武信幸】

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