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台風19号 「もう続けられない」 郡山の酪農家、再建厳しく /福島

空っぽになった牛舎を見つめる芳賀義春さん=福島県郡山市で

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 台風19号で氾濫した阿武隈川の支流、谷田川沿いで酪農を営む郡山市の芳賀義春さん(55)は、牛舎にいた多くの牛を濁流で失った。「もう酪農は続けられないと思う」。東京電力福島第1原発事故後、風評被害を乗り越えてきたが、再建費を懸念し酪農から手を引くことを考えている。【岩崎歩】

     毎朝7時に牛舎に行って、牛の体調を見るのが日課だった。現在も自然と足が牛舎に向くが、空っぽの牛舎を前にすると、決まって言葉が漏れる。「ああ、もういないんだ」

     豪雨に見舞われた10月12日夜、妻(41)と中学2年の長男(13)、小学1年の長女(7)を連れて自宅から1・5キロほど離れた高台に避難した。「たいしたことはないだろう」と思っていたが、雨脚が収まらず、なかなか寝付けなかった。13日午前4時半ごろ、牛舎を見に行くと、屋根のすぐ下まで泥水がつかっていた。手の施しようがなかった。

     水が引いた14日、真っ先に牛舎に向かうと、言葉を失った。牛たちは10メートル先の柿の木に引っかかっていたり、絞った原乳が流れるパイプにぶらさがっていたり。「避難する前に、ロープを切っておいてやれば逃げられたのかもしれない。かわいそうなことをした」と自身を責める。27頭のうち、かろうじて生き延びた8頭は別の農家に預けた。原乳を冷やすバルククーラーやトラクターなど機械類はすべて故障。何も残らなかった。

     祖父から続く3代目。「酪農に興味はなかった」と、大学卒業後は自動車整備士として働いたが、30歳の時、父の苦労を見て継ぐことを決意。当初は「臭いし、かわいいとは思えなかった」。だが、朝から晩まで牛に接しているうちに、愛着がわいた。今も一頭一頭の個性が鮮明に残っている。

     2011年の原発事故では、県産の原乳から暫定基準値を上回る放射性物質が検出された影響で、芳賀さんも一時出荷停止を余儀なくされた。毎日、原乳を搾っては捨てる日々。「福島はもう終わりだ」などとインターネットで書き込まれているのを読み、落ち込んだ時期もあった。それでも、持ち直し、近年は生産量も増え、軌道に乗っていたさなかの水害だった。

     牛のいなくなった牛舎にはちぎれたロープやバケツなどが散乱している。「酪農はやめざるを得ないだろう」。機械類などすべて買い替えれば、2500万円ほどかかる。水害に遭った同じ場所で再開して良いのか、という疑問もある。「こんなに好きになった酪農なのに。本当は70歳までは続けたかった」

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