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きょうから大嘗祭 議論を避けた前例踏襲だ

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 大嘗祭(だいじょうさい)がきょうから行われる。

 宗教色が濃い皇室の儀式に多額の国費が使われることに、憲法の政教分離原則との整合性を問う声は根強い。しかし政府は本格的な議論を避け、前例を踏襲した。

 大嘗祭は天皇の即位に関連する儀式の一つで、新天皇が神々に新穀を供え、五穀豊穣(ほうじょう)や国民の安寧を祈る。儀式は秘事とされ、非公開だ。

 政府は平成の代替わりで政教分離原則に一定の配慮をし、即位の礼などのように国事行為とせず、皇室行事とした。だが、皇位継承に伴う公的な性格があるとして皇室の公的活動費「宮廷費」からの支出を決めた。今回も祭場である「大嘗宮」の建設費などに約24億円を充てた。

 29年前の平成の大嘗祭をめぐっては、県知事らが公費を使って参列したのは政教分離原則に反するかどうかを問う裁判が相次いだ。最高裁は「参列は儀礼の範囲内」と合憲としたが、大嘗祭そのものへの国費支出について合憲性は判断していない。

 一方、大阪高裁は大嘗祭などへの国費支出を「違憲の疑義は一概に否定できない」と指摘した。今も法的な決着がついたとは言えない。

 前の天皇陛下の退位により、新天皇即位まで時間の余裕もあったが、政府は議論に踏み込まなかった。安倍政権の支持基盤で、戦前からの即位関連儀式の継続を重視する保守派の反発を懸念したためとみられる。

 こうした中、昨年11月に秋篠宮さまが「宗教色が強いものについて、それを国費で賄うことが適当かどうか」と発言され、波紋を広げた。

 秋篠宮さまは多額の費用を充てるのではなく「身の丈に合った儀式」にすることが本来の姿との考えを示した。その上で、天皇家の私的生活費にあたる「内廷費」を使うべきだと述べた。

 政教分離に関する重い問題提起だったが、政府はその後、一部を簡素化したものの、儀式のあり方自体を見直そうとはしていない。

 平成の時のように、国民の間で激しい意見対立は起きていない。だからといって、国民が納得しているとするのは早計だろう。

 伝統を守るのは大事だが、憲法問題をあいまいにしたまま前例を踏襲するばかりでは、皇室と国民の距離は広がりかねない。

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