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社説

揺らぐ多国間主義 安定の礎を再構築する時

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 南米チリで今週末から開かれるはずだったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が見送られた。定例化されてから初めてのことだ。

 開催国チリで起きた地下鉄の運賃値上げに対する反政府デモが直接のきっかけだ。会議の安全を確保するのが難しくなったという。

 だが、米中露や日韓、東南アジア、中南米の21カ国・地域の首脳が年に1度、率直に意見交換できる場だ。その好機を逸した損失は大きい。

 政治的、経済的な問題で、規模が異なる多くの国々が利害を調整し、地域全体の安定と繁栄を図るのが多国間主義だ。懸念すべきは、その意義を軽視する風潮が広がることだ。

 震源はトランプ米大統領である。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)やパリ協定、イラン核合意から離脱しただけではない。

 秋の国連総会では「米国第一」をより明確にし、東アジアサミットには3年連続で欠席した。多くの国が失望したのも無理はなかろう。

 多国間の枠組みは、すべての参加国が互いに補完し合うことで利益を共有し、共存共栄につなげるという理念に基づく。

 大国は市場を獲得し、小国は開発支援を見込める。大国が単独行動を抑制すれば、小国には安全保障上の基盤にもなる。メリットは多大だ。

 トランプ氏はこうした枠組みに拘束されるのがいやなのだろう。しかし、多国間の協調を軽視し大国のエゴをむき出しにすれば、国家間の対立は深まり、安定は損なわれる。

 「自国第一」は、クリミア半島を掌握したロシアや、南シナ海の軍事拠点化を進める中国など大国に共通している。大国主義が強まる中で国連は十分な役割を果たせていない。

 日本は自由貿易の恩恵を受けて発展してきた。多国間の枠組みはその礎だ。これが弱体化すれば日本の国益も損なう。再構築に向けた取り組みを主導すべきだ。

 アジア太平洋ではオーストラリアなどとの協力が不可欠だ。ともに同盟関係にある米国に地域協力への関与を強めるよう促す必要がある。

 英仏独などとも連携し、中露にも大国主義をふりかざさないよう働きかけるべきだ。国際協調体制がこれ以上揺らがないよう、粘り強い外交が求められる。

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