新作短編と「善悪の同時存在」
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村上春樹さんの新作短編小説「謝肉祭(Carnaval)」が、文芸誌「文学界」12月号に掲載された。これは昨年から同誌に断続的に発表されてきた連作短編「一人称単数」の「その6」すなわち6作目に当たる。また、今号は「村上春樹・作家生活40年」を特集していて、村上さんと交友のある人類学者で京大学長の山極寿一氏、今年芥川賞を受賞した気鋭の作家、上田岳弘氏ら4人が寄稿している。
この連作については、今年の同誌8月号に「その4と5」2編が発表された折にも記事を書き、いずれの作品にも共通して音楽(広い意味での「歌」)が鳴り響いていることを指摘した。この点、「謝肉祭(Carnaval)」も、まさにシューマンのピアノ曲「謝肉祭」が重要な役割を果たしている。タイトルに添えられたアルファベットがフランス語つづりなのも(英語ならcarnival=カーニバル)、シューマンの曲によってい…
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筆者
大井浩一
1987年入社。東京学芸部編集委員。1996年から東京と大阪の学芸部で主に文芸・論壇を担当。村上春樹さんの取材は97年から続けている。著書に「批評の熱度 体験的吉本隆明論」(勁草書房)、共編書に「2100年へのパラダイム・シフト」(作品社)などがある。