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ソフトバンクグループ(SBG)が7~9月期に約7000億円の連結最終赤字を出した。ベンチャー投資事業での巨額損失が主因だ。
携帯電話やネット事業も手掛けるSBGは日本の代表的なデジタル企業だ。株式時価総額は約9兆円にのぼる。海外企業の買収などでグループの有利子負債は10兆円を超え、金融市場への影響力も大きい。
一昨年、中東のオイルマネーを取り込んで10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を設立した。SBG本体との「2頭立て」で、人工知能(AI)分野などを中心に上場が近い海外の有力新興企業に投資をしてきた。
投資会社化の背景には、孫正義会長兼社長の「成功体験」がある。中国のネット企業、アリババ集団の将来性にいち早く注目し、20億円の投資を数千倍の価値に膨らませた。
今回の巨額損失の大部分は、シェアオフィス事業を行う米ウィーカンパニーへの投資の失敗だ。孫氏が「第2のアリババ」と期待した同社に総額1兆円近くを投資していた。
だが、投資先に目先の業績より規模拡大を優先させる戦略が裏目に出た。ウィー社は赤字が拡大した上、創業者の公私混同経営が発覚し、米国での株式上場が中止になった。
同社株の価値は約6分の1に目減りし、投資事業に大打撃を与えた。SBGは本体で最大約1兆円の金融支援も決めた。ファンドの出資者に迷惑を掛けないためとみられる。
投資先には、配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズなど経営が厳しい企業も少なくない。再建支援が必要になれば、SBG本体の経営に再びしわ寄せされかねない。
ファンドの出資者には投資事業の詳細が逐一、伝えられている。一方、SBGの株主への説明は決算発表まで後回しにされている。
孫氏は「投資判断を失敗した」と認めつつも、「萎縮はしない」と強気の姿勢を崩していない。
だが、今回は成長期待を過大視して大金を張る投資手法の危うさが浮き彫りになった。株主への投資事業の説明のあり方も課題に浮上した。
投資事業がつまずけば、携帯電話事業にも悪影響が及びかねない。孫氏は投資戦略を見直すというが、今回の失敗は重い教訓となろう。