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余録

秋晴れの空の下…

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 秋晴れの空の下、車列に向けられる無数のスマートフォン。「祝賀御列(しゅくがおんれつ)の儀」の風景は、誰もが歴史を記録できる、もう一つの新しい時代を感じさせた。このスマホに欠かせないリチウムイオン電池を開発したのが、ノーベル化学賞を受賞する旭化成の吉野彰さん。だが発売から5年は業績不振に悩んだという▲やっと市場に出した製品が売れない苦境を、業界では「ダーウィンの海」と呼ぶ。進化論の父が唱えた自然淘汰(とうた)説にちなみ、生き残るか死ぬかの瀬戸際を指す。原因は多様だが、その製品を受け入れるほど市場が成熟していないことも多い▲実はこの手前にも、研究者を苦しめる難所がある。基礎研究の成果を実用に向けた研究につなぐまでの「魔の川」と、安全性やコストといった課題を克服し製品化するまでの「死の谷」▲吉野さんは一連の過程で「ダーウィンの海が一番つらかった」と振り返る。抜け出すきっかけはIT革命。「ウィンドウズ95」の発売でネット社会が到来し、持ち歩きに便利な小型蓄電池が熱望されたのだ▲たんぱく質を壊さずに分析する手法を発見した島津製作所の田中耕一さんも、この「海」に溺れかけた。画期的な技術にもかかわらず、それを用いた分析装置は発売直後、1台しか売れなかった▲今では、血液1滴から早期の認知症やがんを見つける医療に田中さんの技術が利用され、各社が競う。荒海を泳ぎ抜いた両氏の粘り強さと、見守り続けた企業の信念は、それこそノーベル賞級だ。

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