9月から7人が戦ってきた王将戦リーグも11月19日に、いよいよ最終日を迎えた。挑戦権を争うのは本局の2人、4勝1敗の広瀬章人竜王と藤井聡太七段になった。残留者、陥落者も決まっている。ともに初挑戦がかかるが、特に藤井が挑戦者になれば、1989年に屋敷伸之九段が記録したタイトル挑戦最年少記録(17歳10カ月)を塗り替える17歳5カ月の新記録を達成する(七番勝負開幕日が基準)。
このため、報道各社の関心も高まり、終局時には特別対局室に大勢の報道関係者が集まった。対局開始の午前10時には、隣で羽生善治九段―糸谷哲郎八段戦があるためスペースが取れず、カメラマンは代表取材の形になった。記録係が開始を告げると、藤井は少し間をおいて初手▲7六歩を指した。【山村英樹】=▲が先手、△は後手
<第69期大阪王将杯王将戦リーグ7回戦>
2019年11月19日
持ち時間各4時間
場所・将棋会館
▲藤井聡太七段(4勝1敗)
△広瀬章人竜王(4勝1敗)
▲7六歩 △8四歩1 ▲6八銀 △3四歩1
▲7七銀 △6二銀 ▲2六歩 △4二銀3
▲2五歩 △3三銀 ▲4八銀 △3二金
▲7八金 △5四歩 ▲5八金1 △7四歩
▲3六歩 △8五歩 ▲6九玉3 △4一玉1
▲7九角5 △5二金2 ▲6六歩 △3一角3
▲5六歩 △4四歩 ▲3七銀1 △4三金右4
▲6七金右1△7三銀4 ▲3五歩4 △同 歩
▲同 角 △7五歩 ▲同 歩 △同 角
▲4六角1 △6四角1 ▲7九玉1 △3一玉
▲8八玉12 △3四歩2 ▲9六歩37 △9四歩11
▲6四角10 △同 歩9 ▲4六銀10 △2二玉2
▲5五歩10 △同 歩10 ▲7二歩32 △同 飛30
▲6三角8 △8二飛2 ▲7二歩8 △7四角26
▲3六角成6△8四銀4 ▲7一歩成1△9三桂
▲8一と14 △6二飛7 ▲9一と43 △7六歩2
▲同 銀 △7五歩2 ▲同 銀4 △同 銀2
▲7六歩 △6五歩32 ▲7五歩16 △6六歩
▲同 金1 △同 飛2 ▲6八香 △5六角25
▲6六香 △6七銀(第1図)
長手数を進めたが、本局は終盤にドラマがあるため、序盤の感想は少なかった。最近の藤井はよく矢倉を採用する。以前は角換わりが多かったが、何か先手番で指すときに課題が生じたのか、矢倉先手番に有力な変化を見つけたのか、単なる気分転換か。本局は最近ではあまり見かけなくなった先後同形の相矢倉へ進んだ。
▲4六角に△6四角とぶつける矢倉は「脇システム」と呼ばれる。本局もそう角が対峙(たいじ)したが、その前に3筋と7筋の歩が交換されており、純粋な脇システムとは違う。
たまたま、関西本部で専務理事をつとめる「元祖」脇謙二八段が会館を訪れており、本局の戦型を何と呼ぶか質問したところ、「歩が交換されたので、脇システムではありません。脇システムもどきでもありません。もし、本局で成功したら将来『藤井システム』になるんですかね」。最後はもちろん冗談で、すでに藤井猛九段が創案した四間飛車の戦法に有名な「藤井システム」がある。
本局に似た前例を調べると、大部分が昭和に指されていたそうだ。大一番が「昔の将棋」になったのは面白い。
角交換の後、▲7二歩の垂らしが藤井の工夫。ただ、再度の▲7二歩は「あまりよくなかったかもしれません。本譜はやりすぎました」と語った。▲9一とと香を取った瞬間に、△7六歩以下が強烈な反撃。飛を見捨てて△6七銀とからみ、控室では「後手優勢」の声が上がった。
第1図以下の指し手
▲6七同金 △同角成 ▲2四歩 △同 銀
▲4一銀1 △8六歩1 ▲3二銀成3 △同 玉
▲8二飛6 …
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