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台風19号で流出した神社の獅子頭、復興のシンボルに 長野・穂保地区

泥の中から見つかった獅子頭を自宅前に置いた米沢真一さん=長野市穂保で2019年11月14日午前10時11分、堀智行撮影

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 台風19号による千曲川の堤防の決壊で大規模な浸水被害を受けた長野市穂保地区などでは、元の場所に自宅を再建するか、移住するかで住民たちの思いは揺れている。そんな中、被災した民家の軒先に防塵(ぼうじん)マスクをつけた獅子頭が置かれた。浸水で跡形もなく流された神社に保管されていたが、泥をかき分け住民たちが捜し出したものだ。設置した住民は「地域の人たちの思いをつなぎ留めるシンボルになれば」と願いを込める。

千曲川の堤防決壊で流失した守田神社とともに流され、リンゴ畑で見つかった獅子頭=米沢さん提供

 獅子頭を置いたのは、穂保地区の会社員、米沢真一さん(55)。日中は手押し車で土砂を運ぶ住民や、災害ごみを積んだ車が行き交うため、獅子頭に防塵マスクをつけ日陰干ししている。「土ぼこりが舞うから忍びなくて」。米沢さんは大切そうにほこりを拭った。

 台風が上陸した先月12日と13日は、約1000年の歴史があると言い伝えられる穂保地区の守田神社の例大祭だった。高齢化で氏子も少なくなり、獅子舞は一時中断していたが、今年は神社の屋根のふき替え工事が完了したことを祝って5年ぶりに復活するはずだった。米沢さんたちは1カ月前から稽古(けいこ)を重ねた。

 だが、13日未明に千曲川の堤防が決壊。避難先のテレビで穂保地区の空撮を見ると、決壊地点の目の前にあった守田神社は、跡形もなく流されていた。米沢さんは「あるはずのものがないことが、ショックだった」と振り返る。

 米沢さんの自宅は床上1メートルまで浸水。13日の本番に備えて神社内に保管されていた獅子舞の道具一式も、どこに行ったか分からなくなってしまった。

 自宅の床下に入り込んだ泥のかき出し作業に追われる中、獅子頭が見つかったのは先月26日。神社から約200メートル離れたリンゴ畑に積もった流木に、引っかかっているのを仲間が見つけた。片付けの合間を縫って、周辺の畑などを捜し回った結果、泥に埋まった太鼓や神社の柱の一部も見つけることができた。

 米沢さんは今も避難所生活を送りながら、自宅の片付けに追われる。子どもの頃から親しんできた神社には、ケヤキが残るだけになったが、米沢さんは「形あるものがみんななくなってしまう中、お宮の残滓(ざんし)だけでも見つかってよかった」と話す。

 大規模な豪雨災害が続く中、千曲川の堤防が再び決壊するのではないかという不安から地域を離れる決断をする住民も出てきている。高齢化が進む故郷が、このまま衰退してしまうのではないかという危機感から、米沢さんは自宅前に獅子頭を置いた。「穂保は私が生まれ育った場所。ここに住んでまた地域を盛り上げたい」【堀智行】

千曲川の堤防決壊で流失した守田神社の跡地。ケヤキを残して跡形もなくなった=長野市穂保で2019年11月14日午前10時42分、堀智行撮影
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