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舞台縦横ときどきナナメ

「常陸坊海尊」 秋元松代の戯曲に挑む長塚圭史

長塚圭史(左)と白石加代子

 劇団東演が創立60周年記念で上演している「獅子の見た夢~戦禍に生きた演劇人たち」(東京・東演パラータで11月28日まで、堀川恵子原作、シライケイタ脚本、松本祐子演出)が面白い。自由な表現が生命線であるはずの演劇までもが国策に組み込まれていった時代。演出家の八田元夫、移動演劇隊「桜隊」隊長で原爆の犠牲となった俳優の丸山定夫ら、なんとか自分たちのやりたい演劇を続けようとした演劇人たちの葛藤と悲劇が描かれる。

 登場する劇作家の三好十郎も、劇作と戦争の現実の間で揺れ動いた一人だ。それだけに、劇中で桜隊が稽古(けいこ)をする三好作の一幕物「獅子」に流れるヒューマニズムが、演劇人たちの意気に重なり胸を打つ。

 さて、その三好の代表作である「浮標」「冒した者」という重厚な戯曲に、シンプルな装置で挑んできた長塚圭史。今でも深く脳裏に刻まれている。この12月には、芸術参与に就任したKAAT神奈川芸術劇場のプロデュースで、これもまた骨太な秋元松代の代表作「常陸坊海尊(ひたちぼうかいそん)」を演出するというから楽しみだ。秋元が三好の戯曲研究会出身というのも縁を感じさせる。

 高度経済成長が始まった1960年代。64年にはアジア初の東京五輪が開催され、戦災からの復興ぶりが世界にアピールされた。そのめざましい経済発展の一方で、忘れられ、置き去りにされてきたものはないのか。東北に残る主君源義経を裏切って逃亡した常陸坊海尊の伝承を踏まえて、秋元が生や性、差別や格差について問いかける戯曲だ。

 三好と秋元、手触りは大きく違うという。「三好さんはひたすら多くを語りますが、秋元さんは短いセリフの中の凝縮ですね。三好さ…

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濱田元子

1989年10月入社。大阪本社学芸部などを経て、2010年から東京本社学芸部。18年から論説委員兼務。担当分野は現代演劇と演芸。年間350本以上の舞台を鑑賞。毎日新聞東京本社夕刊で毎月第4木曜にコラム「日々是・感劇」を連載中。共著に「春風亭一之輔 落語のたくり帖」(自由国民社)。

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