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台風19号で決壊した越辺(おっぺ)川について、全員避難の目安となる警戒レベル4に当たる氾濫危険情報を国が出せないまま堤防決壊に至った。堤防が危険とされる水位を示していた観測所が、河川の洪水予報を出す基準となる観測所ではなかったためで、決壊前には水防団に出動を促す水防警報の解除までしていた。専門家は「観測地点の追加などの見直しが必要」と指摘している。【鷲頭彰子】
気象庁は5月から、豪雨で土砂災害や洪水の危険が予想される際、生き残るための行動を5段階で表示する「大雨・洪水レベル」の運用を始めた。土砂災害警戒情報や洪水予報は、住民自身が避難を決断する判断材料と位置づけられている。
熊谷地方気象台と国土交通省荒川上流河川事務所は越辺川について、坂戸市沢木の入西(にっさい)水位観測所の水位を基に「氾濫警戒情報」などの洪水予報を発表している。台風19号が接近した10月12日は上流の降雨量が比較的少なく、午後5時50分に高齢者など避難に時間を要する人の避難を促すレベル3の氾濫警戒情報を発表。同6時に水位はピークの3・11メートルに達したが、その後は下がり、全員避難を促すレベル4の氾濫危険情報は発表しなかった。
これらの水位を基に荒川上流河川事務所は水防警報を発令。越辺川沿いの水防団に午後1時10分に「待機」、同5時20分に「出動」を発令した。同11時50分には水防活動を必要とする出水状況が解消したとして、警報を解除した。
しかし、入西の観測所から約2キロ下流で越辺川に合流する高麗(こま)川では午後8時、堤防が耐えられる最高の水位である計画高水位とほぼ同じ4・13メートルに達した。さらに越辺川の下流に設置された高坂橋観測所では同7時50分に計画高水位を超えたが、基準観測所でなかったため、予報を出す判断材料とならなかった。
また、さらに下流で越辺川と合流する都幾川(ときがわ)でも水位が上昇し、午後7時40分に氾濫。越辺川は13日早朝、下流の川越市平塚新田と、東松山市正代で、それぞれ堤防決壊が確認された。結局、レベル4の情報が出されないまま、越辺川の氾濫発生情報(レベル5)は午前9時に出た。
国の荒川上流河川事務所の荒木茂・技術副所長は「基準観測所の水位が低かったのでレベル4は出さなかった。決壊の原因を確認し、どうするかは今後検討する」と話す。観測所の変更や追加に関しては「県などと協議が必要」としている。
荒川や入間川のように複数の基準観測所を持つ河川もある。埼玉大の田中規夫教授(河川工学)は「越辺川、高麗川、都幾川の3河川の中で、最も早く水位が上昇する地点が(基準観測所の)入西。早期の警戒態勢を整えるためにも入西の水位で判断するのは妥当だが、他の河川の流域の雨の降り方により、下流の状況が大きく変わることもある。これを教訓に観測地点の追加を含めた見直しの検討も必要だ」と話した。
警戒レベル別の参考情報と避難情報
レベル 住民が取るべき行動 住民避難の参考情報 行政が住民に行動を促す情報
5 命を守る最善の行動 氾濫発生情報 災害発生情報
大雨特別警報
4 全員避難 氾濫危険情報 避難勧告・避難指示
土砂災害警戒情報
3 高齢者らは避難 氾濫警戒情報 避難準備・高齢者等避難開始
大雨・洪水警報など
2 避難行動を確認 洪水注意報
大雨注意報など
1 災害への心構え 早期注意情報