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目をそらさないで

「ダブルケア、その時」編/1 育児に介護、泣き笑い 同じ立場、語り合いたい

ダブルケア生活を送る杉山仁美さん宅の夕食。この日は父と夫の帰りが遅く、母と娘たちで食卓を囲んだ=名古屋市瑞穂区で7月、加藤沙波撮影

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 「娘が幼稚園に行く前に母が便を漏らしちゃって。娘は泣き出すし、地獄絵図だよ」「認知症の義母が息子を踏みつけていて、あぜんとした」。生々しい体験談が次々に飛び出した。聞く人は、笑ったりうなずいたり、時に涙を流したりした。

 ここは名古屋市内で今年5月から定期的に開かれている「ダブルケアカフェ」。子育てと介護を同時に担う人たちが、お茶を飲みながら経験を語り、情報交換する。ある社会福祉協議会の職員の紹介で、カフェを運営する同市瑞穂区の杉山仁美さん(38)を知り、取材を始めた。

 杉山さんのダブルケア生活が始まったのは5年前の4月。長女の幼稚園入園式前日、当時62歳だった母が脳出血で倒れた。介護の知識は何も無かった。長女を幼稚園に送った後、次女を連れて母の入院先に向かう日々。次女を遊ばせてあげようと、児童館に行ったりもした。母の排せつ物を片付ける傍らで姉妹がけんかを始めることもあり、「もう消えたい」とまで一時は思い詰めた。

 7月、杉山さんの自宅を訪ねた。午後1時ごろ、買い物を終えた杉山さんが帰宅した。玄関脇の部屋に「ただいま」と声をかけると、右半身がまひし、発語障害がある母がベッドで左腕を上げる仕草をした。「おかえり」の意味だ。やがて小学生になった姉妹が学校から帰ってきた。「ママに出迎えてほしい」とねだるため、下校時間までに必ず用事を済ませて帰宅する。学校で作ったものを見せたり、宿題の解き方を教えてもらったりと姉妹は杉山さんにべったりだ。

 2人の習い事の送迎で往復を繰り返しながら、夕食を準備し、洗濯物を取り込む。廊下の手すりをつたって何度もトイレに行く母に目をやり「今日は頑張っているね」と声をかけた。

 食事の時間だ。母には嚥下(えんげ)障害があり、家族と同じメニューをミキサーにかけて細かくし、とろみをつける。身長146センチの杉山さんが約10センチ背の高い母を支え、廊下から一番遠い食卓の席に連れてきた。流し台の脇だ。少しでも長く歩き、自分の使った食器を片付けることがリハビリになるという工夫だった。在宅介護は「自宅で暮らしたい」との母の強い希望による。

 ママ友には介護の話はしにくいし、介護する人たちの集いは年配者が多くて行きづらい。「同じ立場の人同士で集える居場所を作りたい」との思いで昨年11月、杉山さんはカフェの運営団体「ダブルケアパートナー」を発足させた。

 姉妹が寝静まった後でネイルをするなど「意地でも自分の時間を作っている」と話す杉山さん。カフェ参加者の輪の中心で、この空間を誰よりも楽しんでいるように見えた。

     ◇

 内閣府は2016年、ダブルケアの実態に関する推計値を初めて発表し、約25万人が未就学児の育児と家族の介護を同時に担っていると明らかにした。今後さらに増加が見込まれるが、まだ社会的に認知されているとは言えない。どんな支えが必要なのか、現場を歩き、考えた。=つづく

     ◇

 この連載は加藤沙波が担当します。


筆者プロフィル

 記者10年目。夫と3歳の息子の3人暮らし。近くに住む実家の親に育児や家事など頼ることが多い。名古屋市出身。


 ご意見や情報をお寄せください。〒453―6109 名古屋市中村区平池町4の60の12 毎日新聞中部報道センター「目をそらさないで」取材班。メールはc.reportage@mainichi.co.jp


 ■ことば

ダブルケア

 主に親の介護と子育てを同時に担う状態を指す。横浜国立大の相馬直子教授らの調査研究から、2012年に生まれた造語。少子高齢化で家族内の介護の担い手が減ったことや、晩婚化に伴う出産年齢の上昇などが背景にある。配偶者や兄弟姉妹などへのケアが重なっている場合にも使われる。

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