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若者の「たまりば」 仲間と日々生きていく=山野上隆史 /大阪

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ラップに思いを乗せて歌うシヴァさん=山野上隆史さん提供 拡大
ラップに思いを乗せて歌うシヴァさん=山野上隆史さん提供

 「とよなか国流行って 時間楽しく過ごして 勉強学んでいる ライフの意味探している けどなかなか見つからない それでもいい 日々生きていくだけ 一日一日当たって砕ける それでも明日は来るんだぜ」

 とよなか国際交流センター(豊中市)に集う外国ルーツの若者が実施したイベントでシヴァさん(17)が披露したラップの一節だ。

 2013年、外国ルーツの若者同士が出会い、社会とつながるため、とよなか国際交流協会で若者事業を始めた。具体的なプログラムは若者の状況によって変わるが、ずっと続けてきているのが「たまりば」だ。

 たまりばは日曜の夕方、「今日はどうする?」といった話から始まる。定番は晩ごはん作り。みんなでメニューを決め、買い物をして、作って食べる。コーディネーター、相談員も一緒に参加し、最近や将来のこと、勉強や仕事の悩み、ルーツのことなど話しながら過ごす。労働者の権利など必要なことを学んだり、地域イベントに出店したりすることもある。

 シヴァさんは父親が仕事で先に来日、母親もネパールと日本を往復する中、ネパールの叔父の家で暮らしていた。中学2年の時、「仕事も落ち着いたし、目の届く範囲で育てたい」という親の希望で急きょ来日。当時、日本で何をするか何も考えられなかったという。

 転入した中学校では日本語が理解できず、集団での授業がつらかった。時々授業にも参加したが、別室で先生と1対1で日本語を勉強する時間が多く、一人で自習する時もあった。「学校は楽しかったけど、一人じゃなく誰かにいてほしいと思うこともあった」と言う。仲の良いクラスメートもいたが、同国の友人はおらず孤独だった。

 そんな中、彼の様子を心配した学校の先生に連れられ、とよなか国際交流センターに来た。それ以来、たまりばに通い続ける。ネパール人の友達もできた。現在、昼はアルバイト、夜は定時制高校に通う。「家に帰るのは11時過ぎ。毎日ちょっと大変。でも、たまりばではリラックスしてみんなと話を楽しめる」。日々の生活を乗り切るためにも、ふっと肩の力を抜ける場は必要だ。

 日本語指導が必要な高校生は10人に1人が中退、卒業までたどり着けても2割弱は進学も就職もできず、半分弱は非正規就職という現実がある(文部科学省調べ)。また、自国で義務教育を終えて来日したが、日本語や入試の難しさ、教育制度の違いから高校進学や編入がかなわず、かと言って仕事も簡単に見つからず「所属がない」若者も増えている。中には親が子どもを労働力として見ていたり、見通しが立てられないままに呼び寄せたりした結果、子どもが振り回されるケースもある。

 「高校卒業後もできれば日本にいたい。日本に来るつもりはなかったし、大変だけど、いいこともある。将来はネパールのために何かしたい」とシヴァさん。

 ラップは続く。「マジで生きていきたい この人生 それぞれオリジナルなマイライフ 昨日の自分に伝えたい 移ろう日々 変化の意味 今日はとても 素晴らしい」。若者が孤立せず、将来への希望を捨てずに生きていけるか。受け入れ体制が問われている。


 地域の活性化や多文化共生に取り組む市民が執筆します。次回は12月13日掲載予定。


 ■人物略歴

山野上隆史(やまのうえ・たかし)さん

 公益財団法人とよなか国際交流協会理事兼事務局長。1977年、大阪生まれ、神戸育ち。高校生の時、阪神大震災を経験。主な共著に「外国人と共生する地域づくり 大阪・豊中の実践から見えてきたもの」(明石書店)。

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