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村上陽一郎・評 『ぼくたちはこうして学者になった 脳・チンパンジー・人間』=松本元、松沢哲郎・著
毎日新聞
2019/11/24 東京朝刊
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1465文字
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(岩波現代文庫・1188円)
二人の個性が切り結ぶ対話の妙
一方は異色の物理学者、残念ながら既に物故。他方は、今や国宝級の霊長類研究の重鎮。今から四半世紀まえに行われた対談の文庫版化である。構想的な側面から、細部に至るまで、どのページを披(ひら)いても、無類に面白い、巻を措(お)く能(あた)わず、とはこのことか。その面白さは何層にも及ぶ。
普通の読み物としても。例えば何事にも(そのなかにはベーゴマも入る)傑出していた松本少年が、色々な機会に出会った優れた大人から、刺激を受け、医師を目指すか、コンピュータ関連に進むか。二者択一の選択に立たされる場面(結果的に脳型コンピュータの専門家になって、ある意味では「二者択二」となるわけだが)。あるいは東大で、教養課程の一年生から、本郷の高橋秀俊研(日本で最初の本格的コンピュータ<パラメトロン>…
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