柳原美砂子 毎日新聞 統合デジタル取材センター副部長
インターネット検索「ヤフー」の運営会社と、無料通信アプリの「LINE」が、来年10月にも同じグループの会社になると発表しました。なぜライバル同士が手を結ぶのでしょうか。
ヤフーは検索のほかネット通販などに力を入れ、月間約6700万人が利用していますが、ラインのような無料通信アプリは得意ではありません。一方、ラインの利用者は約8200万人に上りますが、売り上げの多くを広告に頼り、他の事業を育てることが課題でした。両社は一緒になれば、検索から通販、無料通信まで、スマートフォン一つであらゆるサービスを提供する「スーパーアプリ」を実現できると考えたのです。
スマホアプリのサービスは、お金の支払い、音楽や動画の視聴など、さまざまな分野に広がっています。ただ、多くのサービスを1社でそろえるのは大変です。利用者の好みに合ったサービスを提供するには、多くの利用者のデータを集めて分析する必要もあります。ヤフーとラインは単純に足して1億人超の利用者を囲い込むことで、国内最大・最強の「ITプラットフォーマー(ネットサービスを提供する場)」になる作戦を立てたわけです。
でも、世界にはアメリカの「GAFA( ガーファ )(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」や中国の「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」といった巨大IT企業がいます。ヤフーの会社社長は記者会見で「世界の第3極になる」と意気込みましたが、追いつくのは簡単ではありません。
スマホで支払いができるヤフーの「paypay( ペイペイ )」と、「LINE( ライン )ペイ」は当面、両方とも続けますが、こうした重なっているサービスを将来どうするのか。一つのグループになると大きくなりすぎて、会社同士の競争がなくなれば、よりよいサービスが生まれなくなるかもしれない――など、いろんな課題は残っています。利用者の得につながるのか、注目したいと思います。
経済部で、省庁や銀行、メーカーなどの取材を担当。趣味は散歩や山歩き。学生時代は少林寺拳法をやっていました。1973年福岡県生まれ。好物は、博多では生で食べることが多いサバ。