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SDGs達成目指し、どう行動すべきか 国連広報センター・根本所長、創価大・馬場学長らが鼎談 

SDGs達成のために、大学や学生がどう考え、行動すべきかを話し合う、(右から)国連広報センターの根本さん、創価大の馬場学長、同大OGでTICAD6公式サイドイベント「日本・アフリカ学生イノベーターズ・エクスポ」Grand Award受賞者の佐藤さん=野口雅人撮影

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●国連広報センター(UNIC) 根本かおる所長

●創価大学 馬場善久学長

●アフリカ開発会議公式サイドイベント「日本・アフリカ学生イノベーターズ・エクスポ」Grand Award受賞者 佐藤幸恵さん(創価大学卒業生)

     世界で相次ぐ異常気象、プラスチックごみによる海洋汚染など、今や地球環境保護に対する対策は待ったなしの状況にある。今年9月、国連気候行動サミットでスウェーデンの高校生環境活動家グレタ・トゥーンべリさんが温室効果ガス排出問題に関して世界の首脳たちに訴えたことは記憶に新しい。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)達成の期限である30年まで残り10年。今、私たちは何をなすべきか、国連広報センターの根本かおる所長、創価大の馬場善久学長、そして南アフリカへの留学体験を持つ同大OGの佐藤幸恵さんが話し合った。【司会・中根正義】

    根本かおる(ねもと・かおる) 東大法学部卒。テレビ朝日を経て、米国コロンビア大大学院で国際関係論修士号を取得。1996年から2011年末まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で難民支援活動や政策立案などに従事。国連世界食糧計画(WFP)広報官などを歴任。13年8月より現職。著書に「難民鎖国ニッポンのゆくえ-日本で生きる難民と支える人々の姿を追って」(ポプラ新書)など

    国連と世界の大学をつなぐアカデミックインパクト

     ――まず、わが国のSDGsの取り組みについてお聞かせください。

     根本 SDGsが採択されたのが2015年9月、スタートが翌年の16年1月1日で、採択から4年が経過しました。いろいろな取り組みが生まれているのは確かなのですが、規模・スピードという点ではまだまだ足りない。このままでは30年に17の野心的な目標を達成することはできません。もっと規模を拡大し、スピードを上げていく、そしてより多くの人々に関わってもらうという動きが重要になっています。

     また、これまでは政府や大企業が中心になっていましたが、今後は中小企業や地方自治体、地域などでも取り組むなど、スピード、規模、より身近に、という三つの方向でさらに推進していかなければなりません。

     ――創価大は日本の中で、SDGsに対する取り組みが早かった大学の一つです。

    馬場善久(ばば・よしひさ) 1953年、富山県生まれ。創価大経済学部卒。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学研究科博士課程修了。Ph.D.取得。創価大教務部長、副学長を経て、2013年、第5代学長に就任。専門は計量経済学

     馬場 本学は創立当初から、平和に貢献できる人材を育成するという目標を打ち立てたこともあって、社会に貢献する学生の育成を目指し、世界市民教育に取り組んできました。この延長線上で、2014年に国連のアカデミックインパクト(注1)に加入させていただき、17年からは難民の学生を受け入れています。そして、21年に創立50周年を迎えることもあり、創立60年に向けたグランドデザインを作成中で、SDGsに貢献できる人材育成のために、教育・研究の取り組みができるように準備を進めています。

     根本 国連と大学との連携のプラットフォームとして国連アカデミックインパクトというものがあり、世界では1300以上、日本でも70以上の大学が加盟しています。創価大は非常に早くから熱心に地球規模の課題に取り組んでこられた。私も国連アカデミックインパクト加入記念のシンポジウムで基調講演をさせていただきましたが、その時にとても印象的だったのは、学生の皆さんが、地球規模課題を身近な自分事として考え、何かできることはないだろうかと行動する基盤が、創価大には確立されていると強く実感したことです。また、各地で開催されている「勇気の証言 ホロコースト展」は、平和と人権を考えるきっかけになっていますね。

    世界の課題を「自分事」として捉える視点が重要

     ――佐藤さんは、アフリカ開発会議(TICAD)のイベントで発表されたそうですが、ご自身の体験も踏まえて、SDGsへの思いを話していただけますか。

    佐藤幸恵(さとう・ゆきえ) 1994年、東大阪市生まれ。2013年、創価大文学部入学、15年から1年間、南アフリカ・ウィットウォーターズランド大に留学。17年、英サセックス大大学院で国際教育開発学を専攻。19年から大阪府内の中学校で国語科教員として勤務。16年の第6回アフリカ開発会議(TICADVI)の公式サイドイベントでの発表「日本の伝統文化を生かした特別授業をアフリカの教育へ」で最優秀賞受賞

     佐藤 3年前、TICAD開催の際、日本とアフリカの学生が集まってビジネスプランを発表するというイベントに参加させていただきました。私は大学の交換留学制度を使い、この前年に南アフリカに1年間留学しました。その経験を踏まえ、理数科教育の分野で日本の学生と現地の学生が共に日本のそろばんと折り紙を紹介するというプランをプレゼンテーションし、最優秀賞をいただきました。日本とアフリカの学生が協働するという取り組みにこれだけの反応があった、自分の提案に対してこれだけリアクションがあり、その先のビジョンも見えてきて、確かな手応えが得られました。

     馬場 2010年から世界の課題に対する意識の高い学生を対象に、世界市民を育てることを目標にGCP(グローバル・シティズンシップ・プログラム)という学部横断型の教育プログラムをスタートさせました。佐藤さんはそのメンバーなんです。大学入学時から世界のさまざまな問題にどうアプローチするかという問題意識を持って勉強してきました。その一貫として南アフリカに留学したことが、このイベントに参加する伏線になりました。

     根本 SDGsはまさに学際的な視点が必要で、いろいろな問題を複眼的に捉え、つなげながら視野を広く持って問題を見ていく、正解のない問いにチャレンジしていくという点で非常に有効な枠組みだと思います。

     馬場 正解のない問いについて考えて、一つの解が見つかった時に、それに自分の行動がどう関わるのか。地球的課題に対して、学生たちが身近な視点でアプローチし、日常の行動が変わるというふうになれば、と思っています。

     根本 その意味でも、早い時期に海外に行くことは非常に良いことですね。佐藤さんが留学された南アフリカはいまだに貧富の差が大きく、アフリカ系の人々同士でも衝突があったりします。こうした社会のひずみが顕在化している国々の状況を、早い時期に自分の目で見て触れるということは、非常に意味のある経験になります。

     ――佐藤さんが南アフリカへの留学で、日々の生活で考えるようになったこと、変わったことはありますか。

     佐藤 南アフリカにいた時に、貧困地域にボランティアに行きました。プレハブ小屋でガスも電気も通っていないようなところから、きらびやかな高層ビル群が見え、圧倒的な格差を痛感しました。それは、間違いなく今の私の原体験になっています。携帯電話を使うときにも、レアメタルの問題を考えますし、自分の生活が世界の貧困や紛争と無関係ではない、確実につながっているということを明確なビジョンとして自分のなかで捉えるようになりました。

     また、貧困にあえいでいるかわいそうな子どもたちというグルーブでしか見えていなかったものが、一人ひとり名前のある、個性のある一個人として考えられるようになったことも、日々の言動を変える要因になっています。

     馬場 この若い世代の素晴らしいところは、卒業生や在学生を問わず、世界中でさまざまな形で活躍していることです。彼らはインターネットなどを介して、それぞれの地域や国々の情報を交換しています。我々とは違う発想で、SDGsに対しても取り組んでくれるのでは、と大いに期待しています。

     大学界全体としては、今年4月にイギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education」が、大学のSDGsへの取り組みを評価する「THE大学インパクトランキング2019」を発表し、日本の大学もランクインしたことで、より多くの大学がさらに積極的にSDGsを意識した行動を起こすようになりました。本学も日本の大学では同率4位にランクされ、特に「平和・公正」という部門では世界のなかで61位になりました。これを励みに、より積極的にSDGsに取り組んでいきたいですね。

    SDGsのボードの前に立つ、(左から)創価大の馬場学長、国連広報センターの根本所長、創価大OGの佐藤さん

     ――SDGsの17の目標を見てみると、具体的で必ず自分でも取り組めるものがあります。自分事として、取り組みやすいものになっていますね。

     根本 SDGsは前身のミレニアム開発目標と異なり、途上国主体ではなく、すべての国々が関わることになるので、日本の国内課題に結び付けて考えることもできます。自分たちの足元にある課題を地球レベルの議論に結び付けて考えることのできる枠組みだと考えています。また、「誰一人取り残さない」という方針、これまではどちらかというと平均値で物事が考えられてきましたが、それだとどうしても置き去りにされてしまう人が出てきます。最初から、あらゆる人を救いあげるという手当てを考えながら制度設計するということが重要で、それがSDGsの基本理念になっています。

    国連創設75周年を機に、若い世代の行動を促す

     ――今後、高等教育機関として、SDGsにどう取り組んでいきますか。

     馬場 本学は世界市民教育と循環型社会に資する教育・研究などに取り組んできました。これらをさらに発展させることが重要だと思っています。世界市民教育に関しては、研究面も含めて内外の大学やユネスコと協働していきたいと思います。循環型社会の形成については、アフリカをはじめとする発展途上国・地域に環境面に配慮し、ビジネスとしても成り立つプロジェクトを推進しているところです。学生が本学を卒業する時にはSDGsに対する意識を持って、将来、例えば循環型社会の構築に寄与するという意識を持って社会で活躍することを願っています。

     ――佐藤さんは今、中学校の国語科教員として働かれているそうですね。

     佐藤 一教員として、自分の経験を生かしながら、生徒たちが世界の課題を自分事として受け止め、社会を変えていける変革者としてビジョンを持てるような教育ができればと考えています。また、大学時代に同じ思いを持つ同志と言えるような友人たちに出会えたことが私の宝になっています。そのつながりをこれからも大事にしながら、社会に貢献できればと考えています。

     ――最後に、国連として取り組むべき課題についてお聞かせください。

     根本 2020年はSDGsの取り組みがスタートして5年目になります。そして30年の目標達成を目指し、「持続可能な開発に向けた行動と遂行のための10年」が来年1月1日から始まります。来年はくしくも国連創設75周年の節目の年です。全世界的に、特に若い世代を中心に国連が100周年を迎える2045年がどんな世界であってほしいか、その社会を実現するために、いま何が必要かという「グローバル・カンバセーション」を世界各地で展開していきたいと思います。

     ――2030年、そして国連創設100周年に向けて、その役割はますます重みを増してきそうです。また、大学をはじめとする教育機関の社会への貢献も重要になってきますね。

    (注1) 世界各国の高等教育機関同士の連携、また、教育機関と国連との連携を促すプログラムで、2010年に発足

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