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余録

昔は子どもや女性が突然いなくなる神隠しは…

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 昔は子どもや女性が突然いなくなる神隠しはてんぐの仕業(しわざ)といわれた。古くは人を食う鬼の仕業ともされたが、僧の姿のてんぐならば人を手にかけまいと、失踪者の無事を願う心が犯人をてんぐにしたらしい▲民俗学者の柳田国男(やなぎた・くにお)は「別離を悲しむ人々の情からいえば、どこかの谷陰に活(い)きて時節を待っているものと想像してみずにはいられなかった」と肉親の情を推察した。里人にとって山中はてんぐがすむ異界と考えられていたのである▲今日、人をかどわかす魔は山ではなく、スマホやパソコンからつながるネットの異界にひそむ。大阪の小6女児がソーシャルメディアで知り合った35歳の男に栃木県へ連れ去られた事件を聞けば、今さらながらそう慨嘆(がいたん)するしかない▲男は茨城県で行方不明になっていた15歳の少女とも一緒で、女児を「話し相手になってほしい」と誘ったという。男は警察に「女児が助けを求めていたので助けた」と供述しており、女児の悩みにつけ込んで連れ出した可能性がある▲少年少女が歩む大人への道にはいくつもの枝分かれや行き止まりがある。迷い道にたたずむ子どもたちにささやきかけるネットの怪しい誘いが珍しくない今日である。男はまんまと女児を家から遠く離れた異界に閉じ込めてしまった▲男から逃れた女児は3時間も見知らぬ街をさまよって交番にたどり着いた。自らの力をふり絞っての異界からの帰還に胸をなでおろしつつ、ネットに巣くう魔から子どもらを守る手立てに考えを尽くしたい。

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