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社説

消防署内の暴力 ゆがんだ上下関係是正を

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 人命を救うはずの職場での信じがたい暴力行為である。組織の体質を改めて問わざるを得ない。

     大阪府茨木市消防本部の分署で複数の署員が暴力を振るっていたことが今月、発覚した。4月から5月にかけ、先輩署員が救急車内で血圧計のベルトを後輩の首に巻き一時窒息させたり、手足をロープで縛り消防車に逆さづりにしたりしていた。

     暴力を振るった署員らは「コミュニケーションの一環だった」と釈明したという。被害者は刑事罰を求めていないとされるが、陰湿で悪質ないじめだ。加害者3人が懲戒免職処分となったのは当然だろう。

     消防現場は閉鎖的な上下関係ゆえの体罰やハラスメントが絶えないことがかねて問題視されてきた。

     総務省消防庁は2017年に消防職員を対象に抽出アンケートを実施した。パワハラ被害の経験があると答えた男性職員は17・5%で、見聞きしたケースは41・5%に達した。今年もパワハラなどを理由とする懲戒事例が数多く起きている。

     消防職員は危険な現場で活動するため、厳しい訓練が必要で、指揮命令系統の確立も大切だ。階級に基づく上下関係が厳格になりやすいことが暴力やパワハラの温床となる。

     消防庁は対策として全国の消防本部に相談・通報窓口の設置を求めている。今年1月時点で約8割が開設済みだ。しかし、今年に入っても懲戒事例は相次いでおり、茨木市のケースでは窓口は活用されなかった。

     職員が安心して相談できる窓口になっているか検証し、懲戒事例を徹底的に分析すべきだ。ストレスがたまりにくくするケアや、研修などを通じた意識改革も欠かせない。

     消防職員は労働組合を結成する団結権を認められていない。主要国ではおおむね認められており、国際労働機関(ILO)は日本のケースを問題視している。

     政府は「上司と部下が対立し、服務規律の維持が困難になる」などと団結権に反対している。だが、基本権の制約が職場での被害を訴えるルートを狭めているのではないか。

     陰湿な暴力行為が続けば、優秀な人材の確保にも支障が出る。ゆがんだ上下関係の暴走を防ぐための組織のあり方や、職場環境の整備を政府は本格的に検討すべきだ。

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