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3日間追っかけて見つけたローマ教皇の「心」

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長崎市でのミサの会場に到着し信者の歓迎を受けるフランシスコ・ローマ教皇=長崎市の長崎県営野球場で2019年11月24日午後1時26分、津村豊和撮影
長崎市でのミサの会場に到着し信者の歓迎を受けるフランシスコ・ローマ教皇=長崎市の長崎県営野球場で2019年11月24日午後1時26分、津村豊和撮影

 フランシスコ・ローマ教皇(82)が来日し、23~26日に長崎、広島、東京を駆け抜けていった。カトリック信者ではないけれど、私はこの教皇に興味があった。彼が選出された時、アルゼンチンで取材して「この人、本物かも」と思ったからだ。本当はどんな人なのか。日本に何を残したのか。教皇を追っかけた。【國枝すみれ/統合デジタル取材センター】

「まいったな。本物の聖人かもしれない」

 教皇が選出された2013年3月、教皇の母国、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに入り、教皇を個人的に知る人を訪ねて歩いた。大人も子供も大聖堂の前で歌い、踊っていた。その中に立ちすくんで歓喜の涙を流す女性がいた。スサナ・ビジャビセンシオさんだ。「彼は私の堅信式(入信の儀礼の一つ)を執り行ってくれた」

 スサナさんの家は低所得者用住宅が並ぶビジャソルダティ地区にあった。住所を告げると、タクシー運転手は言葉少なになった。「迎えにはいけないよ」

 教皇は電車と地下鉄を1時間乗り継ぎ、このスラムに通ってホームレスや不法移民の生活向上に尽力したという。「いくら私たちが車で送ると言っても、歩いて帰られた」。ふん尿の臭いが漂うこの道を歩いて帰ったのか? 私は思った。「まいったな。この人は本物の聖人かもしれない」

性虐待被害者を囲んで職務質問

 教皇は23日夕刻に東京・羽田空港に到着した。午後6時すぎ、貴賓室のある建物からパトカーやバイクに先導された教皇の黒い車が出てくると、竹中勝美さん(63)は持参した手作りの厚紙を掲げた。

 「日本にも神父による性虐待被害者はいます」

 竹中さんは小学校4年生の時、児童養護施設「東京サレジオ学園」でドイツ人神父から性虐待を受けた。「日本の教会はこの問題から逃げている。教皇に直訴するしかない」。そう考え、6時間近く待っていたのだ(※記事の最後にこの場面の動画があります)。

 竹中さんは01年に日本カトリック司教協議会やサレジオ学園に手紙を書いて被害を訴えたが、満足な回答を得られなかった。今年の2月に「文芸春秋」(3月号)で体験を公表。日本で初めて神父による性虐待を実名で訴える告発者となった。

 「教皇は一瞬、こちらを見てくれた」。車列が通り過ぎた後、竹中さんはほっとした表情をみせたのもつかの間、東京空港警察署員が竹中さんを取り囲み、職務質問を…

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