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聖地「御嶽」を旅する

(下)神役の女性中心の祭り 島外の女性や男性の参加が課題

宮古島の離島、池間島の聖地の一つ、「フナクス(船越)」。トゥーヌカン(唐の神)とも呼ばれる。当地の研究者、伊良波盛男氏によれば、トゥーヌカンは中国の神、文化伝来の神で、ここは岩上からはるかに中国を望み、交易時代の恩恵に対する感謝と祈願をささげる遥拝(ようはい)所という。といっても、拝所は設けられておらず、断崖からの絶景があるだけだ=沖縄県宮古島市の池間島で2019年10月15日、伊藤和史撮影

 10月、沖縄・宮古島の離島、来間島で開かれた「宮古島の神と森を考える会」の年に1度のシンポジウムを取材した。人口約160人の来間島の神祭りを今後、どう存続させていくかが今年のテーマ。現在6人いる神役の女性は70~80歳代が軸で、神役の後継者不足は深刻だ。来間島だけの事情ではなく、宮古島全体、さらには南の島全域の共通課題で、祭りが中断している地域は少なくないのだという。「下」では、シンポジウムでの議論を中心に紹介する。【伊藤和史】

 小さな島が神の祭りを続けるためには、祭りの数や中身を見直す「ゆるやかな変化」の受け入れも一つの知恵ではないか――。

 会長の居駒永幸・明治大教授(日本古代文学)の提唱を巡って、熱い議論が展開された。祭りは女性の神役を中心に行われているが、高齢化や人口減などで、神役の後継者不足が深刻化しているのだ。その負担を軽減する方策の一つが「ゆるやかな変化」である。

 シンポの冒頭、来間自治会副会長、国仲富美男さんが開催地を代表し、歓迎の言葉を述べた。

 「近年、島の文化への関心が薄れ、危機感を持っている。脳裏に浮かぶのは『赤牛』です。祭祀(さいし)をおろそかにしたため、神様が赤牛となって人々をさらった。とても印象深い話で、今はどうなんだろう?と思いました。もし、また赤牛が現れたら……。そうならないように、島の文化を大事にしていきたい」

 来間島の赤牛の出現については、前回触れた。神様に感謝する祭りをないがしろにしたことが原因で起きる島の危機だ。伝承を踏まえたあいさつには説得力があった。

 国仲さんは1951年生まれの元小学校校長。現在は、昔から伝わる作物の栽培や手造りのみそ、豆腐、神酒などを手掛け、若者たちにそうした取り組みを伝える活動に励んでいて、「神酒の造り方も大分わかってきました」などと話す。つまり、島の男性の中でも祭りのことを真剣に考え、その将来を心配する神様や祭りの味方である。

 ところが、その国仲さんにして、シンポのテーマの一つ、祭りでの男性の役割いかんについては戸惑いを見せた。司会者から「男が祭りに登場せず、支援しない。御嶽の掃除もしない。男がどう関わるかが課題だ」と問われたところ、国仲さんは次のように答えた。

 「祭祀を語るのには、私はまだ若い。おばあ(=高齢の女性)たちの言う通り、やるしかない。(自分たちの考えで)やっていいのかもわからない。拒否しているわけではありません」

 祭りでは神役の女性の役割が大きいことは「上」で紹介した通りなのだが、国仲さんの発言は来間島における祭りと男性の役割分担を巡る現状を端的に示すものだ。男性の参加問題についてはまた後で触れたい。

 次いで、神役を務める女性たち自身の問題についても議論が沸騰した。神役が不足する背景には、女性の出自に関する原則論のようなものがある。というのも、一口に来間島に住む女性とはいっても神役には島の出身者が尊ばれ、宮古島本島を含む他の島、ましてや結婚して本土からやってきた女性は祭りの担い手としてはいかがなものかと、一般には思われているからだ。これに対しては、フロアにいた本土出身者で来間島に移住して定着している女性から、極めて率直な意見が出された。

 女性は、島の出身者が本土や海外出身者との間に壁をつくっているという不満を語った。

 「ヤマト(=本土)の人、フィリピンの人だから(ダメだ。神役にはなれない)と言ってきたそのツケが今回ってきているのでは」と厳しい口調で話し、「本土から来ても来間の子供を育てているのだから、(来間の出身者も)もうちょっと考えてくれたら、もう少しどうにかなる…

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伊藤和史

1983年入社。岐阜支局、中部報道部、東京地方部、東京学芸部、オピニオングループなどを経て、2019年5月から東京学芸部。旧石器発掘捏造(ねつぞう)事件(2000年)以降、歴史や文化財を中心に取材

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