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「きっと大丈夫だから」…宮市亮を支えるイ・チョンヨンとの“兄弟”の絆

情報提供:サッカーキング

ザンクト・パウリの宮市亮(左)とボーフムのイ・チョンヨン(右) [写真]=Getty Images
 11月8日に行われたブンデスリーガ2部第13節のザンクト・パウリ対ボーフム戦後、宮市亮はイ・チョンヨンとユニフォームを交換してお互いの健闘を称え合った。「感慨深かったね」。そんな言葉を交わした二人にとって、この試合は特別なものとなった。

 二人の仲は約8年前に遡る。当時19歳の宮市がアーセナルに移籍して1年が経った頃だった。2011-12シーズンの冬に武者修行でボルトンに加入すると、そこで出会ったのが2009年から在籍していた当時23歳のイ・チョンヨンだ。

 2012年2月に加入した宮市は、同11日のウィガン戦で移籍後初出場とともに、プレミアリーグでのデビューも飾った。2戦目のチェルシー戦では、ブラニスラフ・イヴァノヴィッチとガリー・ケーヒルを圧倒的なスピードでぶち抜いて、今でも色褪せない衝撃的なインパクトを残した。シーズン途中の加入ながら、すぐにポジションをつかんで最終的に12試合に出場したが、そんな活躍の影には4歳上の韓国代表MFの支えがあった。「僕はボルトン時代、彼なしではプレーできなかったと思う」

 当時、イ・チョンヨンは右足骨折で長期離脱を強いられてピッチから遠ざかっていたが、シーズン残り2試合で復帰を果たした。しかし、昨シーズンの主力選手が戻ってきたことで、今度は宮市がベンチで試合を見守り、ついに二人がピッチで共演することはなかった。

 ボルトンで一緒に過ごしたのは約4カ月という短い時間だったが、それでも絆を築くには十分だった。「僕らはとても近い存在だったね」とイ・チョンヨンは当時を振り返る。「彼はとてもいい選手で人柄もいい。僕らが若かった頃、とてもいい思い出があって、決して忘れることはない。お互いとても楽しい時間を過ごしたからね」

 別々の道を歩んでも、二人の交流は続いた。宮市が2015年にザンクト・パウリに移籍して、2度の大ケガに見舞われた時も、イ・チョンヨンは「よくテキストし合っていたね」と苦しい時期の支えとなった。

「きっと大丈夫だから」。そんな言葉に宮市の心は救われた。「イ・チョンヨンもすごい気にかけてくれて、ケガの期間やプロ生活を含めて、本当に大事な人です。僕が韓国に行ったり、彼がオフに日本に来たりと、すごくいい関係が築けています」

 いろんな人に勇気づけられた宮市は、昨シーズンに約1年4カ月ぶりの復帰を果たした。そんなタイミングを見計らったかのように、イ・チョンヨンも昨シーズンにイングランドからドイツに活躍の場を求めてボーフムに加入した。ともにブンデスリーガ2部という舞台で戦うこととなった。

 初対決のチャンスは昨年12月10日に訪れた。ボーフムの本拠地で行われた試合で、宮市は先発出場したが、イ・チョンヨンは不運にも累積警告による出場停止で欠場となった。二人の対決は叶わなかったが、宮市は試合後に満面の笑みで「ホントめちゃめちゃ話しました」とピッチ外での再会を喜んだ。

「イ・チョンヨンは本当のお兄ちゃんって言ってもいいぐらい、ボルトンで本当にお世話になったので。彼がイングランドにいて、僕がドイツにいて、なかなか会う機会がなかったけど、5年ぶりぐらいかな……。電話とかメールとかはしてたんですけど、久しぶりに会って話が尽きなくて。今からまたちょっと会うんですけどね」

 嬉しそうに話した宮市は「次はピッチで戦いたい」と期待したが、5カ月後のザンクト・パウリでの試合では、今度は自身が累積警告による出場停止処分で欠場となった。昨シーズンはお互いが図ったかのようなタイミングでピッチに立つことができず、対決が叶わなかった。

 それでも今シーズンは宮市が完全復活を遂げてレギュラーに定着。イ・チョンヨンはひざのケガで8月末から離脱を余儀なくされていたが、ザンクト・パウリ戦の2節前に復帰を果たした。いよいよ実現する初対決が待ち遠しくて前日にも電話で言葉を交わした。「『明日いよいよピッチに立てるね』みたいな話をしました」

 二人はそれぞれ先発出場で同じピッチに立った。右MFの宮市とトップ下のイ・チョンヨンとではマッチアップこそ少なく、試合も1-1のドローで勝負はつかなかったが、二人はともに90分間を戦い抜いた。

 試合後、宮市は交換したユニフォームを手に清々しい笑顔で充実感を語った。「ようやくというか、ボルトン時代も一緒のピッチでできなかったので、今日はピッチに立ててよかったです。やっぱり彼がボールを触ると、すごく危ない感じがするので、改めていい選手だなって思いました」

 イ・チョンヨンは、「スタジアムはいい雰囲気だったし、ザンクト・パウリやリョウとの対戦を楽しめたよ」と穏やかに語る。「彼はこの4、5年はケガのせいで不運なシーズンを送っていたけど、プレーする姿を見られて嬉しかった」

 出会いから約8年が経ち、チームメイトから対戦相手になったものの、やっと同じピッチに立って時間をともにした。この特別な経験が二人の絆をまた深めたに違いない。

 宮市には大きな刺激となった。「彼は韓国で英雄みたいな選手なので、僕も追い越していけるように頑張っていきたい」と力強く言う。イ・チョンヨンも対戦相手ながら、そんな“弟”に、期待に満ちた温かい眼差しを送る。「彼にはいいシーズンを過ごして欲しい。彼はもっと良くなると思うよ」

 これまでいろんな人に支えられてきて宮市亮の今がある。その一人であるイ・チョンヨンには、ピッチでの活躍を見せることが最高の恩返しになるはずだ。“お兄ちゃん”の背中を追いかけながら、宮市は戦い続ける。

取材・文=湊昂大

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