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余録

旧首相官邸の庭にカヤの巨木があったという…

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 旧首相官邸の庭にカヤの巨木があったという。亡くなった中曽根康弘(なかそね・やすひろ)元首相は27年前に出した自伝の冒頭に、尊敬する戦前の首相、浜口雄幸(はまぐち・おさち)がこの巨木を眺めて心を癒やしていたという随想を引用していた▲「とにかく業績を残したい」。首相官邸に入った直後の中曽根さんがその一念にとりつかれて疲れ果てた夜半、夜空に黒々と浮かぶ巨木を偉大な先人も眺めたとの思いに粛然とした。「田中曽根(たなかそね)内閣」の批判が世にあふれた頃である▲「総理、本気ですか。これは持ちません」と閣僚名簿に再考を求めたのは当時、刑事被告人だった田中角栄(たなか・かくえい)の派閥の大幹部だった。非難を覚悟で田中派からどっと人材を登用したのは、内閣は仕事、結果責任と見切った大勝負という▲時は米レーガン、英サッチャーの新保守主義が戦後の「大きな政府」の非効率にメスを入れた1980年代である。戦後政治の総決算を掲げた中曽根政権は国鉄民営化をはじめ、日本でのこの潮流を代表する行政改革に命運をかけた▲首相主導の決定や審議会による政策立案など、今日に続く統治方式も生んだこの中曽根政治である。「不沈空母」なる不穏発言で始まった外交での「ロン・ヤス関係」も、後の冷戦終結を経て今も日米関係の基本形のように語られる▲「政治家は歴史の法廷の被告席に座る」。時を経た巨木との語らいから生まれた指導者の孤独な実感だろうか。ならばこそ近年の政治家の人気取りや、歴史的な発想力の貧困を難じていた晩年の言葉が心に残る。

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