台風19号 ペット同行避難進まず 指針ない自治体も

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 各地に甚大な被害をもたらした10月の台風19号では、避難所でペットの受け入れを断られるケースがあった。ペットの避難について環境省が自治体に対応を求めているものの、ペットに関する避難所の運営指針すらない自治体もあり、課題を残した。

 千曲川の堤防が決壊して多くの家屋が浸水した長野県内では、自転車置き場にペット用のスペースを設けた避難所もあったが、原則はペットの受け入れを断った。このため、やむを得ず車中泊をする被災者が出た。県は1月、地域防災計画の中で、被災者とペットの同行避難について「適切な体制整備に努める」と改定していたが、実際の対応まで検討されていなかったという。

 豪雨から2日たった10月14日、県はペット専門の相談支援センターを設置。長野市で延べ15匹(11月18日現在)をボランティアらが預かった。11月2日には、犬10匹が入れるケージを備えたコンテナハウス(13平方メートル)を避難所の北部スポーツ・レクリエーションパーク(同市)に設けた。県の担当者は「被災者の避難行動に影響が出ないよう、今回の対応を検証し、課題を洗い出したい」と話す。

 浸水被害や土砂崩れが相次いだ宮城県丸森町。佐藤和夫さん(63)は10月12日昼、10年以上飼っている小型犬2匹と小学校の体育館に避難した。避難所を運営する町職員が、佐藤さんの居住スペースを一番端にするなど工夫した。

 体育館にはピーク時に110人が寝泊まりしたが、ケージに入れられた2匹はおとなしく、ほとんどほえなかった。11月5日に犬を自宅に戻すまで、トラブルは起こらなかったという。

 一方、丸森町でペットを受け入れたのは佐藤さんの1件だけで、ペットに関する避難所のマニュアルはない。佐藤さんは「ペットは大事な家族。周囲への迷惑が気になるが、安心して避難できる場所がほしい」と話す。【山口朋辰】

市長号令、庁舎を開放 西日本豪雨

 2011年の東日本大震災では、ペットが自宅に取り残されたり、飼い主とはぐれて放浪したりする事例が相次いだ。このため環境省は13年、飼い主とペットが一緒に逃げる「同行避難」を推奨するガイドラインを作成。地域防災計画への記載や、避難所・仮設住宅の管理者との調整、必要な支援物資の備蓄を自治体に求めている。

 ただ避難所へ同行避難しても、ペットと同じ空間で生活する「同伴避難」が必ずできるわけではない。被災者には動物が苦手な人や動物アレルギーを持つ人もいるからだ。避難所がペットNGなら、知人宅や施設に預けるほか、車の活用などが考えられる。

 こうした中、同伴避難所を実現した例がある。昨年の西日本豪雨を経験した岡山県総社市だ。片岡聡一市長の「市長室を使ってもいいからつくれ」との号令で、市役所など3カ所に設けた。獣医師らとも連携し、ペットの体調管理を指導。ピーク時に46人の飼い主が犬17匹、猫6匹と避難生活を送った。担当したスポーツ振興課の白神和彦課長補佐は「飼い主にとってペットが心のケア。避難所の担当者が話し合い、衛生面での対応やルールを決めれば運営がスムーズに進むことが分かった」と振り返る。

 東京都獣医師会事務局長で、NPO法人「ANICE(アナイス)」の平井潤子代表(59)は、避難所でのペット受け入れ拒否について「飼い主に受け入れ可能な施設を紹介するなど、行政側に理解が進んでいなかったのでは」と分析する。その上で「飼い主も災害をシミュレーションしておき、自分、家族、ペットと全ての命を守ることを考える『防災力』と『飼い主力』を養うことが重要」と話している。【山口朋辰】

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