熊本地方裁判所=遠山和宏撮影

 熊本県立済々黌(せいせいこう)高(熊本市中央区)の部活動で「伝統」名目で丸刈りを強制されるなどして退学を余儀なくされた元生徒の男性が「校内の違法行為を放置し、精神的苦痛を受けた」として、熊本県に1円の損害賠償を求めて熊本地裁に提訴していたことが判明した。2日に第1回口頭弁論があり、県側は請求棄却を求めた。

 済々黌高は1882年創設の熊本県内有数の進学校。

 訴状などによると、男性は2017年4月の入学式後、他の新入生とともに同校応援団から校舎屋上に集められ、30分以上、大声で校歌を歌わせられた。入部したソフトテニス部では同月下旬、他の1年生部員と共に3年生から「伝統」として強制的にバリカンで丸刈りにされた。

 男性は翌5月に退部後、うつ状態となって不登校になった。同校から2年生への進級を不可とされたため、昨年5月に退学。県内の通信制高校へ転学し、今年9月に提訴した。

 男性側は、同校内で「シメ」と呼ばれる先輩からの強制指導行為は、100年以上の歴史を持つ伝統校に根ざした独特の文化と指摘。「学校側が違法なシメを黙認・放置し、男性が不登校となった原因と知りながら対策を講じなかったのは安全配慮義務違反に当たる」と主張している。

 男性の代理人弁護士は「明文化されていない校内ルールを問う裁判は珍しく、無批判に続く伝統に一石を投じたい」と話す。賠償金1円について、男性の母親は「賠償金が目的ではない。学校はシメ文化を見直し、謝罪してほしい」と訴える。

 県側は毎日新聞の取材に対し「元生徒の訴えと不登校や退学との間に因果関係はないと考えており、学校の対応は適切だった」として争う姿勢を示した上で「事実関係を確認している」と説明。済々黌高は「この件は県に任せている」としている。【栗栖由喜】