メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「ふつう」に生きるということ

/21 「できない」を「できる」に

「ふつう」に生きるということ

[PR]

 「せんせい、12がつだし、今年ことしはクリスマスかいをやっちゃだめですか。みんなでプレゼントをちよって交換こうかんしたいんです」

     ぼくともだちの「かれ」が熱心ねっしん先生せんせい提案ていあんをしています。じつはクラスの仲良なかよしの来月らいげつ転校てんこうすることになりました。そのこころのこるようなイベントができないか、かれはずっとかんがえていたのでした。

     先生せんせいこまったようにいました。

     「うーん。ちょっとむずかしいかな。プレゼント交換こうかん学校がっこう禁止きんしされているから先生せんせいもやったことないしね」

     「えー? いままでやったことがないからって、やれないなんておかしいです。いままで禁止きんしだったとしても、みんなではなって、ルールをめれば大丈夫だいじょうぶだとおもいます」

     いつになく真剣しんけんかれ先生せんせいがっています。きっと、それだけともだちとのわかれがさみしいのでしょう。

     「でもプレゼント交換こうかんといっても、おこづかいのないはどうやってプレゼントをえばいいの? おかしをプレゼントにすると、アレルギーの問題もんだいもあるし、それに……」

     先生せんせいは、つぎからつぎに「できない理由りゆう」を説明せつめいしてきます。すぐにこたえられなかったかれは、だまってはなしくしかありませんでした。

           *

     かえみちかれともだちにいました。

     「今日きょうさ、先生せんせいにクリスマスかい提案ていあんしたんだけど、全然ぜんぜんダメだったよ。できない理由りゆうをたくさんわれちゃってなにかえせなかった」

     かれはとてもくやしそうな様子ようすです。

     「でもさ、たしかにクラスでプレゼント交換こうかんってムリがない? だっておれもプレゼント交換こうかんきらいだもん」

     「え、どうして?」

     「だって、がんばってプレゼントえらんでもさ、それをもらったよろこぶかどうか、わからないじゃん。それに、自分じぶんしたおかねともらえるプレゼントの金額きんがくがちがったら、なんかそんした気分きぶんになるしさ」

     かれはまったく納得なっとくしていません。

     「そりゃあ、学校がっこう禁止きんししてるし、ダメな理由りゆうはあるとおもうよ。でもさ、いままでダメだったからダメだってってたら、なにわらないじゃん。永久えいきゅう禁止きんしのままだよ」

     「だったら、クラスのみんなにそういう提案ていあんしてみればいいじゃん」

     われてみれば、たしかにそうです。かれは、明日あすかえりのかいで、いてみることにしました。

           *

     「来月らいげつぼくたちの仲間なかま転校てんこうしてしまいます。みんなでおものこるようなクリスマスかいをしたいのですが……」

     かれおもいつく問題もんだいてん解決策かいけつさくをすべてはなしました。先生せんせいかれをじっとています。はなわると、みんないっせいにげました。

     「授業じゅぎょうあとあつまれるひとあつまればいいとおもいます。場所ばしょ公園こうえんでもいいし、先生せんせいにおねがいして教室きょうしつでもいいし。だってわたしたちがパーティーやるのは自由じゆうでしょ?」

     「いいものを交換こうかんしようっておもうからダメなんだよ。みんながマジでいらないものをってきて、交換こうかんしない? いらないもの交換こうかんってなにかウケるし」

     「交換こうかんもいいけど、みんなでツリーをつくって、ってたものをけたらどうかな。そのまえでみんなで写真しゃしんをとって」

     「あ、それいいかも!」

     先生せんせいはだまっていていました。そして、おもいきったようにいました。

     「よし。ちょっとだけはや授業じゅぎょうわらせて、かえりのかい延長えんちょうしてやりましょう。公園こうえんさむいし、あめるかもしれないものね」

     「よっしゃあ!」

     かれも、クラスのみんなも、おおよろこびです。

           *

     「ふるいからあたらしくしよう」っていうのは、ちょっと乱暴らんぼうですよね。だって、ふるくてもそのルールをつくった理由りゆうはちゃんとあるはずですから。でも、「大切たいせつだからまもる」のと、「いままでそうだから、これからもそう」というのは、まったくちがはなしのようながします。

     かれは、やりたいことをかんがえ、それができない理由りゆうつたえました。みんなは、できるようにするために知恵ちえい、先生せんせいこころうごかしました。そう、選択肢せんたくしは、えらぶだけではなく、自分じぶんたちでもつくれるんです。もちろん失敗しっぱいはつきもの。でもそのときは、またはなって、もっともっといい方法ほうほうかんがえればいいのではないでしょうか。

     「ツリーはどうやってつくろうか」

     「新聞紙しんぶんしまるめて、ちょうでっかいのつくろうぜ」

     「みんながったものを最後さいごにくじきでプレゼントしてもいいかも」

     クラスのみんなは興奮こうふん気味ぎみ。そして……転校てんこうするは、はちきれんばかりの笑顔えがおです。


     財政学者ざいせいがくしゃ井手英策いでえいさくさんが、社会しゃかい仕組しくみをものがたりをつづります。

    ぶん井手英策いでえいさくさん

     1972年生ねんうまれ。慶応大学経済学部教授けいおうだいがくけいざいがくぶきょうじゅども3にんのおとうさん。

    川辺洋平かわべようへいさん

     1983年生ねんうまれ。イラストレーター。

    おすすめ記事
    広告
    毎日新聞のアカウント
    ピックアップ
    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. ロシア・ザギトワ選手「活動停止」 事実上の引退宣言の可能性 18年平昌五輪“金”

    2. 希望者は桜を見る会出席 前日に地方議員研修会 昨年4月「私物化」浮き彫りに

    3. 巡査長が中学生平手打ち「ふてぶてしい態度、腹立った」 和歌山県警、書類送検

    4. 五輪特需、延長頂きました スナック、キャバクラなど会場周辺で容認へ 警視庁検討

    5. Dr.STONE テレビアニメ第2期の制作決定 「ジャンプ」の人気マンガが原作

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    今週のおすすめ
    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです